こんにちは!スマートバンクでUXリサーチャーをしているHarokaです。
このブログでは、2024年9月1日に実施された、第12回 Xデザインフォーラム「カルチャー x チーム x デザイン」の登壇内容を抜粋してお届けします。
13:30-15:18 特別セッション「チームのカルチャーとチームとデザイン」
・「表現を通じた集団的な自己認識」 富田誠(東海大学教授)
・「リサーチカルチャーブックを形作るチーム体制」 瀧本はろか (株式会社スマートバンク UXリサーチャー)
・「知が生まれてくるチームづくりとは?」 瀧知惠美 (株式会社MIMIGURI リフレクションリサーチャー/エクスペリエンスデザイナー)
今回、特別セッション「チームのカルチャーとチームとデザイン」というタイトルにて、東海大学の富田先生と、株式会社MIMIGURIの瀧さんと一緒に登壇させていただきました。
それぞれ登壇前に、参加者の方と一緒に分かち合いたい問いがあると良いね、と登壇者内で話し合いました。 富田先生から、「瀧さんも、Harokaさんも、デザインやクリエイティブな知恵の新しい応用可能性、そして職能を見出されているように感じる」といった嬉しい気づきの共有もあり、大変恐縮ながら、リサーチを“チームでする”取り組みにフォーカスして、発表資料を作りました。
リサーチカルチャーブックとは
発表で取り扱うのは、2023年12月に公開した、スマートバンクのリサーチカルチャーブックです。 元々は新入社員向けのオンボーディング説明資料として構想をはじめ、運用していましたが、こういったものが外部公開されていると他社の皆様の役にも立てるのでは?と着想して外部公開に至りました。
外部公開バージョン作成時には、他社のリサーチャーや社内メンバーへのヒアリングを重ね、コンテンツを精査しました。 smartbank.co.jp
カルチャーブックについては、今年5月に行われたリサーチカンファレンスのポスターセッションでも発表させていただき、多くの方に興味を寄せていただきました。
特に質問が多かったのは、「どうやってカルチャーブックを仕上げていったの?」というもの。
なお、ポスターセッションについては以下の記事も併せてお読みください。 blog.smartbank.co.jp
事の発端は、私が入社した2022年4月に遡ります。 スマートバンクは、創業者がユーザー理解、ことN1インタビューをとても大事にしながら事業を作り上げて来ました。 入社直後、会社のバリューを策定するタイミングがありました。
バリューを策定する時に重視したのは、「今できている/大事にしたいスマートバンクの良いところや価値観を言葉にする」というところ。 自分がスマートバンクに所属して良いと感じる振る舞いや誇れるところを探し、全員で付箋を出しました。 たくさん出て来た中で、多く見られたのはユーザーを深く理解したいというメンバーの想いでした。
いくつも候補がある中で、バリューは3つに絞られ、その一つに「Think N1」ができたのです。
1.Think N1
対話と分析を重ねて、本当に重要な課題を発見しよう 大きな成功から逆算して、チャレンジを続けよう
最初に、みんなから出てきたのは「N1」という言葉。ユーザーと対話を重ねて実在する人のイシューを捉え、それを解決するプロダクトを作るーーそれが私たちのプロダクト開発のスタイルです。N1は、とことんユーザーと向き合うということ。私たち”らしさ”のある言葉です。人々が本当に欲しかったものをつくるために、このやり方を強く信じています。さらに、「N1」には「No.1」という意味も込めていて、1人のユーザーの欲しかったプロダクトをより大きく育てて、たくさんの人に届けるところまでチャレンジを続けていきます。
バリュー策定の流れについては以下の記事に詳細が載っています。 blog.smartbank.co.jp
一連の流れを体験してみて、自分が最も驚いたのが、「今ある価値を言語化する」ところでした。 こうありたい、こうなりたいを言語化してそれをバリューとするのではなく、今自分たちが大事にしている価値観を再認識し、それをもっと強めていこうという整理方法は、リサーチカルチャーブックにも生かされています。
なお、スマートバンクでは「カルチャーをもっと濃くしてくれる人を仲間に入れたい」という思いもあり、チーム活動の根幹に据えられているのも特徴的です。
こうした流れの中、リサーチャーに求められる役割としては、創業当時に大事にされてきたユーザー理解への想いを継承することと、その想いを具体化するような活動を増やし、チームが大きくなっても変わらず大事にされる環境を整備することだと理解しました。
顔を見知っている今の事業フェーズだからこそ作る意味がある、そう感じて体系化することにしたのです。
よって、リサーチカルチャーブックについては、以下の3つを大事にしながら作成・運用を進めてきました。
1.リサーチ活動を伝えやすくする
リサーチ活動を伝えるには、主体者自身がどんな活動をしているかを深く理解せねばなりません。そのための下準備として、バリュー策定時と同様の流れをリサーチチーム全員で実施しました。 お見せしているのは、会社のバリュー策定時の参考資料ですが、同様のものが出来上がっているとイメージいただけると幸いです。
急にバリューを考えましょう!といってもすぐには出てこないので、具体的な案件でうまくいったものや、チームメンバーから掛けられて嬉しかった言葉などをその場に出しながら話し合いました。
私の場合、「こうありたい」よりも「こうはなりたくない」を考えた方が考えが進みやすかったこともあり、「リサーチ活動をしていく上での最悪のシナリオ」を考え、それがなぜ最悪だと自分が感じているのかを出していきました。
チームメンバーにインタビューしてもらい、そう感じたのはどんなエピソードから?避けられるにはどうすればよかった?などあらゆる角度からひたすら話し、その場で付箋に書いて整理.....を繰り返します。
議論が進む問いとしては、「私たちの組織では、なぜユーザー理解に取り組むのか」「チームとしてどんな状態になるといいのか」「取り組むチームで大事にしていることは何か」「実際に取り組んでいることは何か」...etc 。
1時間では収まりきらず、何回かに分けて話し合ったり、社外のリサーチャーとこのテーマでディスカッションしたりと、自分の中にある思いを言語化できるように時間をかけました。
そうして、話し合って来た中で繰り返し出て来た言葉や、大事にしたい価値観などを踏まえ、リサーチ活動のキャッチコピー、イメージをつくりました。
キャッチコピーを作ったら、それがチームに伝わるような形に仕上げていきます。 カルチャーブックの中では、ファーストビューで必ず目に入るようにしたり、キャッチコピーのイメージが伝わりやすいような写真、図を配置しています。
2.他職種とコラボレーションしやすくする
私の中で、ユーザー理解をチームで実施する場合は、リサーチャーだけがユーザーに詳しくても意味がないと思っています。
リサーチャーが知り得た情報にいかに興味を持ってもらい、一緒に進めるか。ユーザー理解が、メンバーの仕事の延長線上に位置し、どうやったら共通項を見出してもらえるか。
リサーチカルチャーブックは、全社のバリューである「Think N1」の体現方法の一つなので、全社員が身近に感じてもらえるような工夫を凝らす必要があると感じました。
リサーチ活動に従事するメンバーが役に立つものではなく、一緒にリサーチ活動をするための第一歩になることを大事に、自分の職種とリサーチとの関わりをイメージしてもらいやすくするための工夫として図解をフル活用しました。
例えば、これはリサーチ活動の主な流れと、他職種との関わりを示したものです。
この図を置いた狙いは、全体像をつかみやすくすることと、一緒に働くならこうなるんだなとイメージしやすくすることです。
具体的な案件について、例えばこれはアンケートフローですが、マーケ、広報、プロダクトなどあらゆる文脈で定量的にユーザーについて把握したい場合にお見せしているような図です。
リサーチカルチャーブックでは、アンケートフロー、インタビューフロー、ユーザビリティテストフローの3種類を載せています。 これらは、リサーチャーが主導するものの設計段階から他職種が関わって一緒に進めることが多い調査手法です。
全体の流れの共通認識を持ちながら、それぞれタスクに落としていくときに用いています。
外部公開する際には、ご自身が一人でリサーチ活動をするケースも想定し、何を外注できそうか(=協力要請すると良さそうか)がわかるようにしたいとも考えました。どこまでを自分で行い、どこまでお願いしていいのかわからないといったお悩みに寄り添いたいと考えています。
3.興味を持ってもらう運用とセットで活用する
リサーチカルチャーブックは、まとめ終えたら終わりではありません。ここからがスタートです。 リサーチカルチャーブックを通じて成し遂げたい目標は、チームが大きくなっても根幹を流れる価値観が行き渡るようにすることです。
そのためには、メンバーにユーザー理解を身近に感じてもらう仕掛けがあると良いと考えました。 活用したのが新入社員のオンボーディングです。職種や役職にかかわらず、全員に対して入社初月と翌月に実施しています。 オンボーディング資料としてリサーチカルチャーブックを活用し、説明することと、実際にインタビューの場に同席してもらっています。
スマートバンクのメンバーは、ほとんどが自社サービスのユーザーのため、インタビューで実際にユーザーの使い方を聞くと気づきが生まれます。
自分との共通項、思いもよらなかった使い方やお困りごと......実際に出会ったユーザーを頭の引き出しにたくさん入れておき、事業開発やプロダクトづくりに活かしていくことを狙いとしています。
また、こうした取り組みを通じてリサーチャーが何をする人なのか、どんな関わりをしてくれるのかを体感してもらうのも狙いです。
最後に、リサーチャーのスキルをチームに活かすことにも力を入れています。 この4月にチームにmaaya sanが入ってくれたのですが、彼女はリサーチャーのスキルを活かし、採用広報のミッションに貢献する取り組みも積極的に行ってくれています。
ブログをリリースする際、自分一人で構成を考えたり、組み立てたりするのはなかなか難しいものです。 そこで、リサーチャーからインタビューをすることで話してもらい、構成に活かしたり、話題を膨らませたりするようにしています。 取材記事といった形で書くことも多く、maaya san が主導で取り組んでくれています!
ユーザー理解はもちろんのこと、組織の職種理解、人物理解を進めることでよりリサーチの設計にポジティブな影響が出ると考えます。
一方、スマートバンクは事業フェーズが変わり、どんどん成長していきます。それに合わせて、リサーチカルチャーブックも成長させていかなければならないとも思います。 どうやったら、リサーチ活動を通じてカルチャーを濃くできるか、それはどんな行動や振る舞いなのか、今事業からみてリサーチ活動に求められているものは何か、自分自身に問いを投げかけながら、チームに貢献していきたいと思います。
スマートバンクでは、一緒に働いてくださる方を募集しています。ユーザー理解を一緒に進めたいとお感じの方は、ぜひお気軽にご応募いただければ幸いです!