前置き
こんにちは。スマートバンク 新春エンジニア駅伝 2026 のトリを任された最終走者の @yutadayo です。
昨年に株式会社スマートバンクエンジニアが取り組む2025年に解決していきたい重要技術課題10選 というエントリーを書きました。
25年度はAI機能のプロダクトへの組み込みや、マスコットキャラのワンバンの登場、ポイント機能のリリース、念願の非接触決済対応(GooglePay)といった、様々なリリースを行ってきました。
ワンバンクは少しずつ進化しつつも、まだまだ理想に向けて発展途上の段階です。 現在のワンバンクは、お金を「使う」「借りる」「わかる」部分の機能を提供していますが、私たちの暮らしには、他にもお金にまつわる課題は山積しています。
例えば、お金の流れがわかった上で、貯められるようにしたい。さらには、貯めたお金を投資して増やせるようにしたいなどです。ワンバンクは、お金の課題を一気通貫で提供できる、”お金の All-in-One アプリ”を目指しています。

このエントリーでは去年のエントリーを振り返ると共に、そういったプロダクトの理想状態に向けて2026年はどういった箇所に課題があり、ワンバンクとしてどういう価値をユーザーに届けていこうとしているかを技術的な視点で紹介していこうと思います。
1. お金を見える化する機能のアップデート
ワンバンクではクレジットカードや銀行口座の明細履歴を連携して管理できる機能の提供を行っています。25年度はアプリ内に貯金タブを作り、そのページで銀行残高やポイントといったお金の状態を一つの画面で見れるようなアップデートや、AI埋蔵金チェッカーといった支出を分析する機能のリリースなど、お金の可視化がよりしやすくなる機能を多くリリースできました。
一方で、昨年のエントリーでは連携先の増加に合わせて発生しているデータ収集のパフォーマンス問題に焦点を置いて、解決を行っていきたい旨を書きましたが、依然今でもその問題に悩まされています。
具体的にはご利用いただいているユーザー数の増加や、連携いただくカードや口座の増加に伴い、さらにパフォーマンス面がシビアになり、並列化などの試みでパフォーマンスが改善した時期もありましたが、現状はさらに改善対応が必要になってきています。
重点的に取り組みたいテーマ
定期的なバッチ処理でデータを取得 / 更新していますが、反映を早くしたり、更新があった際にそれに素早く気付けるようにしていきたいと思っています。自分の支出や資産が見たいときにシュッと見れる状態が理想だなと思っています。
現状は、取得対象のデータに対して、バッチ処理(1日1回)でデータを取得している構造のため、並列化を行っていますが、どうしても完了に時間がかかってしまっています。
データ提供元のシステム状況に影響を受けるのでデータ取得がうまくいかないシーンもあり、データ取得対象の性質に合わせて最適な形でデータを更新する。取得タイミングも一括ではなく分散させてデータを取りにいけるような改善を行っていく予定です。
また、データ反映後のユーザーへのフィードバック体験や、証券口座への対応といった資産をより把握しやすくするための機能価値の追加も行っていく予定です。
2. 多様な資金需要に応えられるプロダクトへの進化
ワンバンクではあとばらいチャージという機能で急な出費が発生した時に手元にお金が無い状態でもすぐに入金できる手段をサポートしています。
昨年度には、マイナンバーカードによる本人確認の即時承認やGoogle Payのリリースによって、アプリをインストールしてから数分であとばらいチャージしたお金を決済に利用できるようになりました。急な資金需要にスピーディに対応できるようになると共に、ホーム画面には利用可能な金額や返済情報をわかりやすく表示し、体験を大きくアップデートしてきました。
また、あとばらいチャージ マイペース払いという、これまでより多くのお金を分割で借りれる機能をリリースしました。
重点的に取り組みたいテーマ
2026年はユーザーが求める金額をできるだけ早期に提供できるようにシステムのアップデートにチャレンジします。決済明細や支出傾向を分析して提携事業者が行う支払い能力の判定精度を上げたり、返済体験をさらに向上してうっかり忘れなどで利用できる金額が下がってしまわないようにサポートする機能のリリースに取り組んでいきます。
支払い能力の判定のための機械学習基盤を強化するため、収集できるデータを広げたり、分析するためのデータ基盤を一層強化していく予定です。
3. データ基盤
上記のエントリーでも触れましたが、Snowflakeを基盤にしたデータ分析環境の整備や、Ask ワンバンのリリースにより、データ量の問題で取得に時間がかかっていた部分や、仕様の複雑さにより、データを調べるコストが高いとった問題が大幅に解消されました。
重点的に取り組みたいテーマ
2026年度は機能追加により、決済いただいたレシートデータ、連携いただいているユーザーの資産データ、与信のために提供いただいている請求書や銀行の明細といった、ワンバンクでしか収集できない貴重なデータが増えました。金融サービスとしてはどれも非常に価値の高いデータですが、まだまだこれらを事業やプロダクトに活かせる形で整備できていないという現状があります。
こういった元データを正規化、クレンジング、扱いやすいデータに加工して、各チームがキチンとプロダクト転用できる形にするための動きを加速していきたいと思っています。データを整備することで下記のような価値を作っていけると考えています。
- レシートデータの品目や事業者番号、店舗の情報などを抽出・整備してマーケティングデータとして外販できるようにする
- 資産データを分析し統計情報として扱えるようにして、ワンバントークなどのLLMと連携しているサービスのツールとして活用する
- 請求書や銀行の明細記録から特徴ある情報を抽出して与信モデル強化に活用する
4. オンボーディング体験の向上
昨年のエントリーではオンボーディングフローの長さを改善し、ユーザーの求める体験に素早く到達させることを掲げていました。ここに対して、マイナンバーカード読み取りによる本人確認作業の効率化、バーチャルカードの即時発行による決済の体験価値向上など、効果がでたものもありますが、オンボーディングフローの短縮化にトライし、逆にKPIが悪化した施策もあり、上手くいったものと難しかったものと結果が別れる形となりました。
重点的に取り組みたいテーマ
引き続きオンボーディング体験を向上していきたいと考えており、今年に特に力を入れていきたい点としては、下記のようなポイントになります。
- 本人確認方式のへ方式(セルフィーとICチップ読み取りによる本人確認)導入による、本人確認作業の簡略化
- 会員登録後、アドレスや電話番号などを忘れてしまい、詰んだ状態になる問題や重複してアカウント登録をしてしまう問題への対処
本人確認に関しては、いずれ廃止が決まっている方式から新しい認証の仕組みに移行していくことで、より安全に素早く本人確認をユーザーが終えられるような体験に変えていきます。また、現状でも登録後の問い合わせとして多くあるログインできない、アカウントを間違って登録してしまったという問題に対して、ユーザー自身で問い合わせすることなく自己解決できる仕組みの整備を行なっていく予定です。
5. 不正対策システムのアップデート
昨年のエントリーでは、クレジットマスター攻撃やDDosへの対処といった、大量に発生する不正攻撃への対策を重点的に行う旨のエントリーを書いていました。そこに関しては攻撃を自動でブロックするための仕組みや、ルールベースでの不正検知の仕組みを改修するなどして、大きな成果を生み出せていると思います。詳しくは下記の資料を是非ご覧ください。
重点的に取り組みたいテーマ
大規模な不正の抑制や、顕在化しやすい不正に対してはルールベースでの不正検知の仕組みで対応できていますが、下記の点でまだまだ改善していく部分があると考えています。
- 小規模な不正攻撃、特定の加盟店やユーザーの状態に依存した不正
- 本人認証を通らずに不正に繋がってしまっている取引の抑制
ルールベースでの不正検知の仕組みだけでは一定限界があると考えています。決済のパラメータやユーザーの残高、カードの状態などを加味した機械学習ベースでの不正検知システムの構築を行い、より検知範囲と精度を上げていく必要があると考えています。
また、3Dセキュアといった本人認証を挟む決済の精度もまだまだ上げていける余地があると思っています。加盟店や決済カテゴリといった不正に繋がりやすい取引の特徴を分析し、決済時に本人認証を求める精度をチューニングできる仕組み作りも並行してやっていく予定です。
6. ファクタリング事業のグロース
スマートバンクでは個人事業主や法人を対象にワンバンク請求書買取というファクタリングの事業を去年から新規事業としてトライしています。自社で与信を行い、請求書を買い取るスキームで事業を行っており、立ち上げから半年で37倍成長と結果も出始めていて、非常に今後が楽しみな事業です。
重点的に取り組みたいテーマ
ファクタリングのチームは新規事業ということで専任のPMやデザイナー不在の中、エンジニアが中心となりAIを活用して高速なプロダクト構築を行っています。そして運営を行う中で主に下記のような課題が顕在化してきました。
- 申し込み数の増加により、ユーザー様への送金業務や、弁済があった際の振り込み元の確認など、人力でやっているオペレーションの負荷が高まってきている
- 与信判定ロジックを強化し、買取金額やTierの判定を行っていきたいが、与信に使うデータの整備が追いついていない
オペレーションの問題に関してはワークフローを整備し、できるだけ自動化できるようにシステムを構築していく予定です。また、与信ロジックに関しては入出金明細といった与信のために使う情報のOCR、データの正規化、分析を強化し、請求期限のチェックや複数社での弁済義務の有無の確認など与信精度向上につながる材料を増やし、与信ロジックを磨いていく部分に注力していこうと思っています。
7. AI 機能 - ワンバントークのシステム改善
昨年からベータ版として提供していたチャット形式でお金の相談ができる「ワンバントーク」を今年に正式リリースしました。こちらはLLMと社内のデータを活用してシステム構築されており、日々いろんなお悩みをマスコットのワンバンが応対してくれています。
重点的に取り組みたいテーマ
社内でLLMが呼び出すツールの整備やプロンプトのチューニングを行っていますが、よりユーザーの質問にあった精度の高い回答をするには、PDCAをさらに回していく必要があると思っています。ユーザーから得た回答に対するフィードバックデータを元にした改善や、会話上のやり取りの内容をオペレーターが確認し、修正していくなどの泥臭い改善をやっていく必要があると思っています。
また、LLMを活用した実装も初期に実装したLangGraphqパターンからメンテナンスのしやすさを考えて既に別のアーキテクチャに変更したりといった改修も行っております。今後のメンテナンスや各種AIツールが提供するSDKの組み込みなども考慮して、アーキテクチャを随時アップデートしていく必要があると考えています。
その他
今回取り上げきれなかったのですが、以下のような課題もあり、今年度中にトライしていきたいと思っています。
AI を活用した開発の促進
- 一部の機能などはAIレビューのみでリリースまでできないかの検討
- エラー検知後、bug要因の特定から fix リリースを行うまでの自動化や効率化
- 現状でもSentryへの issue 起票をフックにして自動で bug となっている箇所の特定をAIにやらせるなどの取り組みを行っています。
データ量増加に対しての対処
データ量の増加に合わせて、データベーススキーマの migration 時における課題や、DBの読み取り性能に関する問題が顕在化してくるようになりました。
より安全にDBスキーマの変更が行えるような仕組み構築や、読み取り専用のDBは既にあるのですが、一部のモデルクラスのみ参照するようになっているので、そちらの適応範囲を随時広げていくなど、安定したサービス運営が行えるようにしていきたいと考えています。
モバイル開発
モバイル開発の課題に関しては第18区走者の @kaneko さんの記事にまとまっていますので、こちらも是非見てみてください。
まとめ
振りかえってみると、25年度中に掲げていた技術課題には一定の成果が残せた箇所もあれば、課題が残っているもの、新規に増えたものもあります、引き続きエンジニアチームで課題解決を行っていく必要があるなと考えています。
2026年度も金融のコアである与信基盤のアップデートや、ペアカードを中心とした家族の支出、資産の見える化に関する機能拡張、新規事業の立ち上げといった、大きなテーマが待っていて非常にワクワクしています。そこに対してAI活用をさらに推進し、大きな課題に対してスピード早く課題解決を行っていけるエンジニアチームにしていきたいと思っています。
まだまだ、ワンバンクにはエンジニアリングを上手く行い、課題解決を行えば、ユーザーへ価値を提供できるチャンスが眠っています。チャレンジングですが非常にやりがいがあるなと思っていますので、少しでも興味のある方がいらっしゃったら、是非一緒に開発しましょう!