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B/43を運営する株式会社スマートバンクのメンバーによるブログです

「B/43 Tech Talk 〜 Fintech×サブスクリプションサービス立ち上げの裏側〜」を開催しました

こんにちは。スマートバンク広報のいわたちか(@chika_iwa_)です。先月「B/43 Tech Talk 〜 Fintech×サブスクリプションサービス立ち上げの裏側〜」と題してイベントを開催しました。130名を超える方々に応募いただき、ありがとうございました!

当日、イベントの前半ではエンジニア陣がB/43プラス開発にまつわる技術的な知見をLT形式でお話ししました。また後半にはB/43プラスを作るエンジニアとPM、リサーチャー協業の裏側と題してトークセッションをお届けしました。

今回は、当日参加できなかった方やイベント内容を見直したい方向けに、アーカイブ動画、LTの資料、そしてトークセッション部分の文字起こしを公開します。

アーカイブ動画の紹介

当日の内容は下記YouTubeにアーカイブ公開しました!当日ご都合が合わなかった方も、ぜひ動画でご視聴いただけると嬉しいです。

youtu.be

4つのLT登壇スライドの紹介

前半は、B/43プラスの開発に携わったサーバーサイドエンジニア3名とアプリエンジニア1名からLTがありました。

1.サブスクリプションサービスをつくる時にエンジニアが考えること @ohbarye

speakerdeck.com

2.クレジットカード発行システムの裏側 @uribou

speakerdeck.com

3.新機能のために検討したテーブル継承パターンと選択 @hirotea

speakerdeck.com

4.サブスクリプション機能制御の設計における勘所 @rockname

speakerdeck.com

トークセッション〜 B/43プラスを作るエンジニア/PM/リサーチャー協業の裏側 〜

後半は、4人のエンジニアにPMのBNBN(ブンブン)さん、UXリサーチャーのharokaさんも加わり、CTO yutaさんモデレーターのもと「B/43プラスを作るエンジニア/PM/リサーチャー協業の裏側」と題してトークセッションを実施しました。文字起こしの形で内容をご紹介します。

Q1. プロダクトのWhy, What, Howを作る部分にエンジニアがどう参画していたか?

yuta)では早速1つ目ですが、「プロダクトのWhy, What, Howを作る部分にエンジニアがどう参画していたか?」をテーマに話していきたいと思います。まずはPJ全体を取りまとめていたPMのBNBNさんからお願いできますか?

BNBN)PRD(プロダクト要求仕様書)をお見せしながらお話します。事業上の目的は「サブスクで月額480円を受け取ることでLTVが上がる」「B43事業の限界利益を改善し、次ラウンドの資金調達を有利な条件で進めたい」というものでした。既存の収益源に加えて、もう一つ事業の柱を新しく建てることが大きな目的です。

B/43プラスのPRD

yuta) 事業者としては収益構造を新しく作ることが背景にあったかと思いますが、一方でユーザーさんへのメリットはどのように作っていったのでしょうか?

BNBN)ユーザーさんのメリットは2つ考えていて、1つは「家計管理をより便利にする上位機能を使えるようになる」こと。もう1つは「B/43プラス専用の特典を受けられる」というところを設定していました。

yuta) 無料のアプリが有料プランを出すと一部のユーザーが嫌がるなどの懸念もあるかもしれないですが、そのあたり不安に思っていたこととか、どうやって払拭していこうとか考えていたところはありましたか?

BNBN)企画当初はめちゃくちゃ不安でですね、本当に成功するかなと話し合していました。まずは、アンケートとインタビューをして、勝ち目がある企画なのかを検証しました。ヘビーユーザーに向けてアンケートを取ったのですが、回答者の15%が「500円以上払ってもいい」という回答でした。それをもとに成立するかもしれないと考えて、どんどん企画を前に進めていきました。

yuta) アンケート結果のファクトもあったので、それを頼りに進めていったのですね。企画からリリースまでどれくらいのスパンで開発されていたのでしょう?

BNBN)企画のスタートが2022年8月で目標にしていたリリース時期が2023年7月なので、丸1年がかりのプロジェクトでした。開発自体は8,9ヶ月くらいですね。

yuta) かなり大規模な企画でしたね。エンジニアサイドにも少し聞いてみたいのですが、何を作るか、どうやって作るかなどにエンジニアとしてどう関わってきたかを教えていただけますか?

ohbarye) 先ほどのLTでもお話ししたとおりエンジニアもPRDを書いていました。PRDはいわゆる仕様や要件を書いているもので、プロダクトのWhy, What, HowのWhatにあたる部分ですね。

一般的にエンジニアはHowを任されるイメージがあるかなと思っていて、弊社も「どう作るか」の部分も一任されてエンジニアで設計を決めていきますが、その手前のWhy, Whatの部分によって制約を受けてしまうことも結構あると思います。そのため、当社ではWhatの部分から入って、エンジニア目線で提案することも多いんですよね。今回のプロジェクトについては、自分で意識的にPRDを書きました。

yuta) エンジニアだとPRDはそもそも書いたことない人も結構いるかなと思うんですが、どんなふうに書いていたか工夫したこととかありますか?

ohbarye) 今回自分が他社の仕様を調査したり検討する中で、月額課金そのものについて自分が一番詳しいなと思ったので、「うちのプロダクトで実現するならこうじゃないですか?」というのを一旦PRDとして書いて、それをPMやデザイナーに見せてフィードバックもらうようなことをやりました。

工夫でいうと、1-2ヶ月をかけてドキュメントを書いていると「なんでこういう風にしたんだっけ?」と意思決定を忘れてしまうこともあると思います。意思決定のログをPRDの端っこにくっつけて、この仕様にした根拠をリファレンスとして貼っておくのは役立ちましたね。

yuta) 他にエンジニア陣のuribou さんは、プロダクトのWhatにどう関わっていましたか?

uribou) Whatに関わった話でいうと、実際に作った機能だけでなく作るのを見送った機能もいくつかあったなと思います。そのような機能も、なるべく工数を削減してファーストリリースに入れたいという話もあって。PRD をベースに各機能のMVP (実用最小限の機能) は何かという議論をしました。

もう一つ、B/43 プラスのリリースを遅らせて提供する機能を増やすというオプションもあるので、開発側からいくつか実装プランのオプションを提示して「ここまで入れるとこれくらいの期間になって、こういうことが実現できると思うけどどうか」という話もしましたね。B/43 プラス全体としての MVP (実用最小限の機能) は何かについても議論しました。その際はユーザアンケートでとった各機能のニーズ整理表、どういう背景でどんな機能がより必要とされているかなどの結果をもとにスムーズに決めていけましたね。

yuta) 実際あれもこれも入れたくなりますし、入れる機能より削る機能が議論に上がることもありますね。PM目線でいうと、エンジニアの動きについてどうでしたか?

BNBN) ohbaryeさんがおっしゃっていたようにPRDを一緒に書いてくださることはとても助かりました。また1stリリースで入れない判断をした機能があったのですが、その時に「こういうプランだったら間に合います」「こうするとこの時期になります」というオプションを提示してくれたので、PMとしてすごく意思決定をしやすかったなと思っています。

Q2. ユーザーニーズに寄り添った開発をする上で工夫していること

yuta) では、2つ目のテーマで「ユーザーニーズに寄り添った開発をする上で工夫していること」というテーマでお話したいなと思っています。ユーザーのイシューをどう捉えて解決するかを担っていただいている、UXリサーチャーのharokaさんからお話伺えますか?

haroka) UXリサーチャーはもしかしたら皆さんの会社にいない職種かもしれないので、簡単に紹介したいなと思うんですが、スマートバンクには「Think N1」というバリューがあり、1人のユーザーから気づきを得て事業を作っている会社です。それをまさに体現する職種で、自分自身は横軸であらゆるチームと関わり日々チームにユーザー視点を提供しています。開発プロセスでいうと最初にリサーチが位置づけられていまして、今回のB/43プラスでもまさにPMのBNBNさんと協業しながら進めています。

特にエンジニアさんの業務では「開発の意図がわかっている状態」や「ご自身が作っているモノに対するフィードバックを得ながら開発を進めていける状態」が理想的だと思っていて、そのあたりに気をつけながらリサーチャーとして協業して進行してきました。

yuta) なぜこれを作るのかや、作ったあとのフィードバックをもらえるのはすごくありがたいですよね。具体的に、B43プラスにおいてはエンジニアたちと一緒にどんなことを進めましたか?

haroka) アンケート調査については、課金機能に詳しいohbaryeさんと一緒に機能や実現可能性を踏まえて設問設計をしました。またhiroteaさんなどにもN1インタビューに同席いただいて分析や考察を一緒に進めましたね。ユーザビリティテストはrocknameさんと一緒に進めて、リリース前にユーザビリティ上の棄損がないかを確認しました。

B/43プラス開発にまつわるアンケートやユーザビリティテスト

yuta) 実際にインタビューにエンジニアが同席する機会も結構あったかなと思うのですが、hiroteaさんは同席されていかがでしたか?

hirotea) まず自分はサーバーサイドエンジニアなので、アプリエンジニアと比べるとよりユーザーさんとの距離が遠くなりがちで、自分の実装したAPIがどう触られるのかなかなか仕様レベルではイメージがつきにくいと思っています。今回インタビューに同席させていただくことで、そもそもユーザーさんにこういうニーズがあるんだとか、こういうところで迷っていてリクエストが到達しないのかなど、生の声を聞けたのは何より嬉しかったことかなと思っています。

yuta) 先ほどLTでもカスタムカテゴリの機能開発についてもありましたが、そのあたりの機能開発でも何か気づきはありましたか?

hirotea) 特にカスタムカテゴリや決済の分割は仕様自体が複雑で、そもそも導線に気づいていただけないこともあったかなと思います。そんな時も、インタビュー後の検討会でリサーチャー目線での意見と、アプリエンジニア側での改善すべき箇所を聞けて、それをもとにサーバー側の具体的な改修の話もどんどん進めていけました。そういった気づきを得られたのは収穫ですし、プロダクト開発がスムーズに進む実感が得られました。

yuta) アプリエンジニアのrocknameさんはユーザビリティテストを一緒に進められたというお話でしたがいかがでしたか?

rockname) 率直に実施できてよかったなと思っています。そもそもユーザビリティテストについてもう少し説明させていただくと、実際にある程度MVPが出来上がったリリース前のアプリを端末にインストールしておいて、それをインタビュー対象のユーザーさんにお渡しして行います。例えば「このアプリを操作してB/43プラスに申し込んでみてください」のようにざっくりとした課題を提示して、ユーザーさんがそれを達成できるかを見てフィードバックを得るものです。

Figmaなどの静的なプロトタイプでのインタビューもできるのですが、そうするとプログラム上でしか表現できないような動的な操作や僕らが意図していないような正規のフローから外れた遷移などを発見できません。逆に、ユーザビリティテストではその辺りの“想定外”のフィードバックを得られたので、すごく価値を感じましたね。

yuta) 実際にユーザービリティテストを進める中で、ありがたかったフィードバックはありますか?

rockname) 例えば、B/43プラスのユーザビリティテストでは課金フローの検証を念入りに行いました。その中でも、残高不足で課金に失敗してしまった時に、我々が想定していたフローからは外れてしまい、残高をチャージしたあと課金画面に戻れないみたいなユーザーさんが何名かいらっしゃいました。

それをどうやって課金フローに戻すか解決策を考えるところで、実装の詳細が分かっているアプリエンジニア側から「こういう解決策なら、割と工数低めに実装できますよ」のように改善案を出してクイックに実装へ進めることができました。ユーザビリティテストを実施して、そこにアプリエンジニアが関われて良かったなと感じています。

Q3. リリース後のグロースをどのように進めているか

yuta) 最後のテーマです。B/43プラスをリリースしたあとも、どんどんサービスを伸ばしたいと思っているので、グロース施策をどのように進めているかを聞いていきたいと思います。 まずはPMのBNBNさんからお願いできますか?

BNBN) 自分のブログにも書いたのですが、リリース半年前の2月にリスク洗い出し会(プレモーテム)を行った時に、「リリース後の計測をちゃんとやる」というタスクについて話が出ていたんですよね。

yuta) リリース半年前から計画していたとは早いですね。具体的にどんなことを検討したんですか?

BNBN) データベース側でどんな計測ができるかを話し合ったり、アプリエンジニアとどこにどんなイベントログを仕込むかを綿密に議論したりしました。その上で要件をまとめてFigmaでダッシュボードの叩き案を共有して、3月頃には設計していました。

B/43プラスのダッシュボード

yuta) ダッシュボードを早期から設計していたのですね。グロースの施策はいつ頃から仕込み始めたんですか?

BNBN) リリース前から2つほど大玉のグロース施策を考えていて、既にPRDを作ってモックもFigmaで作っていました。並行して、リリース後にどのように定性調査を進めていくかをUXリサーチャーのHarokaさんと一緒に設計していきました。そして、リリース後1週間のタイミングで最初のアンケートを配信して、アンケート回答者の中から何名かお声がけしてインタビューを進めています。

yuta) リリースした後すぐに、どれだけ使われているかを定量・定性で知るのは大事ですね。エンジニアの uribou さんからは、リリース後の動きについてどう考えていますか?

uribou) まずエンジニアとしては、作ったものに対して早くフィードバックが得たいと思うので、リリース前に定量的な評価設計とダッシュボードが用意されていたのが大変ありがたかったです。

リリース前にそのような準備が出来ているため、リリース後の翌日からグロースのための定例を行い、問題点や改善案をチームでディスカッションすることが出来ていましたね。結果的に、改善もスピーディで、リリースした翌週にはプラス加入の導線バナーの表示ロジックを変更して、課金していただくことを増やすことができました。

yuta) 定量的な評価がリリースしてすぐ確認できるのはいいですね!他に定性面の方などは何かありましたか?

uribou) まさに定性的な情報を集めるのが結構うちの会社の特徴かなと思いますが、UXリサーチャーのharokaさんもいらっしゃるので、アンケートやユーザインタビューのような定性的な評価もリリース前から設計されていました。

そのため、リリースしてすぐにプラスに加入してくれた方、加入していただけなかった方が、なぜ加入してくれた・くれなかったのかを実際のユーザの声として集めることができました。これは、これからグロース施策を考えていく材料としても非常に重要ですが、やっぱりモノを作るエンジニアとしても自分が作ったものに対してダイレクトなフィードバックがすぐに得られるという意味でとてもありがたかったです。

yuta) ohbaryeさんは、グロースにつながる動きで何かエンジニア側で工夫されたことなどありますでしょうか?

ohbarye) uribouさんが言ってくれていたように、やっぱり自分たちが作ったものの反応をすぐに見たいとPJメンバー全員が話していたので、分析クエリを準備することやリリース直後にアンケートを配信することを、ちゃんとプロジェクトのタスクとして積んでいたのは進め方として非常によかったですね。

機能開発や最後のQAでいっぱいいっぱいになってしまって、そういうことが後回しになってしまうプロジェクトも世にはあるかもですが、その辺りを今回は事前に詰めていたので実装終わった後も分析ダッシュボードを作れました。

PMのBNBNさんが「こういうことを見たい」という数字を予め用意してくれたり、ダッシュボードのイメージも提示してくれていたので、とても進めやすかったです。

yuta) ダッシュボードを作る上で工夫したポイントはありますか?

ohbarye) 最初に僕がダッシュボードをガッと作りましたが、実際に運用が始まった後は僕がメンテナンスすると言うよりは、PM目線で見たいデータをシュッと出せるようになっていることが大事になってくると思います。その時に都度「このカラムは何の意味ですか?」などの疑問があるとスピードが上がっていかないと思うので、今回追加したすべてのテーブル・カラムにメタデータとしてコメントを残しました。

例えば、「サブスクリプション」というテーブルがあったとして、「このテーブルのレコードはユーザーがどういうアクションした時に作られます、こういうアクションの時は作られません」などなど全部メモしてあります。テーブルやカラムの定義や説明を見る方法を残しているので、エンジニアでない人もいつでも確認できて、自分でも好きにクエリが描けるように足回りの整備をプロジェクトの中で行いました。

BNBN) 実際とても分析しやすくて、メタデータを見ながらカラムの意味を理解して自分で数値を出すことができています。リリース後色々なデータを元に次の手を考える必要があるので、それをスピーディにできて本当に助かりました。

トークセッションはここまで。Q&Aも含めてご覧になりたい方はこちらから↓

youtu.be

当日参加してくださった方々の声

アンケート

  • 使っているサービスの裏側が色々伺え、非常に面白かったです!
  • サブスクリプション機能を考える中で、どの機能がどの会員ステータスで有効にするのかどうか?というところの設計が甘いまま、変更に弱いような設計がされそうなところを身近で感じていたので、大変参考になりました。
  • 重要な機能追加時のクラス設計・DB設計むずかしいですよね〜!と思いつつ拝聴しました! すごく丁寧にまとめてお話しされていて、かつイケてないポイントもシェアされてて学びがありました〜。
  • 技術的な知見ももちろんですが、事業への関わり方も良い参考になりました。
  • エンジニア・PM・デザイナー(リサーチ、UI/UX)の距離が近く、一つの人格みたいに動けていて、羨ましいなと思いました。

X(旧Twitter)のポスト

togetter.com

おわりに

今回は、「B/43 Tech Talk 〜 Fintech×サブスクリプションサービス立ち上げの裏側〜」のアーカイブ動画、LTの資料、そしてトークセッションの文字起こしをお届けしました。

サブスクリプションサービスの立ち上げの知見や、エンジニアや他職種のPJへの関わり方なども少し伝えられたイベントだったかなと思います。Super Ownershipに職種を超えて、Think N1にユーザーの課題を捉えてよりよいプロダクトを作るチームです。

スマートバンクの技術やPJの動き方が皆さんの参考になれば幸いです。


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おまけ:B/43プラスカードの開封の儀をした時の写真たち。

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