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B/43を運営する株式会社スマートバンクのメンバーによるブログです

総額11.5億円のデットファイナンスを成功に導いた5つの大事なこと

株式会社スマートバンクの下河原雄太 (X@Yshimogawara)です。

当社は2024年4月に総額11.5億円のデットファイナンスを完了させて、リリースを出させていただきました。

prtimes.jp

デットファイナンス(負債調達)は、資本が厚くなるエクイティファイナンス(資本調達)とセットでやる方が貸し手(レンダー)としても検討しやすく、圧倒的王道ではあります。ただ、当社については経理・財務チームが手厚くなったのがSeries A調達(2022年7月)から半年以上経った後であることもあり、エクイティファイナンスとは完全に切り離したデットファイナンスとなりました。

その中でも、11.5億円というデットファイナンスをクロージングできたことを、チームとして非常に誇らしく思っています!

今回、「デットファイナンスを成功に導いた5つの大事なこと」という形で、「エクイティファイナンスから時間が経っていたのに、なぜデットファイナンスで11.5億円という金額を借りることができたのか」を公開しようと考えました。

直近、当社の代表である堀井翔太 (X@shota) の「メルカリ 小泉さんからのエグい学び」に対して「ここまで教えてもらえるのすごい」という声を多数いただきましたが、「スマートバンクだけではなく、スタートアップで活躍している全ての会社、全てのメンバーが一緒に成功していく世界を作りたい」と、スマートバンクのメンバー全員が本気で思っています。

どこまで参考になるかはわからないですが、今回書いた内容が、他のスタートアップの皆様のデットファイナンスやお仕事に少しでも役にたてれば幸いです!

本題に入る前に、この度ご参画いただきました三菱UFJ銀行様・商工中金様・JA三井リース様・紀陽銀行様・北國銀行様や、ご検討いただいた各レンダー様、融資に関してご協力いただいた投資家の皆様や社内メンバーなど幅広い皆様に、改めてこの場を借りて厚く御礼申し上げます。

本題に入る前に

今回のブログでは、「レンダーに提出する事業計画とか、資本政策とかどうやって作るの?」という話は一切しません。

というのも、事業計画とか資本政策は経験さえすれば誰でも作れるようになるもの、いわば単なる「スキルセット」であり、そこに「スペシャルな何か」は存在しないと思っているからです。

もちろん、ご連絡いただけたら個別にお伝えはしますし、ご要望あれば別途書くことも検討しますが、「やればできるようになるスキルセット」は誇らしげに語るようなものでもないし、自分たちを差別化する要素ではないと思っています。

そういった内容を期待して開いていただいた方には申し訳ないですが、そういったお話を聞きたい方は別途ご連絡いただけたら嬉しいです!笑

また、デットファイナンスは、経理・財務チームの達哉さんが私が入社する前から進めていらっしゃいました。実際私が入社した後も、デットファイナンスの実際のアクションは達哉さんに殆ど取ってもらっていました。実際はこの調達は達哉さんの功績だと私は思っていますが、諸事情考慮して私の名義で今回のブログは執筆しています。いつも感謝していますが、この場を借りて達哉さんには改めて深い感謝をお伝えします。

私が入社する前の経理・財務チーム。この時点から、すでに今回発表したデットファイナンスは取り組んでいました

デットファイナンスの件も含めて、多様な課題やタスクに対して考えてアクションするキャパシティを時間的にも思考的にも割けているのは、周辺をサポートしていただいているコーポレートチームや会社のメンバーのおかげです。この後「大事なことを」をたくさん書いていますが、何より「いいチーム・メンバーにサポートしていただける」ことが一番大事であることは言わずもがなではあります。

本題

大事なこと1つ目:「当たり前」を徹底的に突き詰める

デットファイナンスにあたっては、レンダーとの初回MTGから、初回以後のプレゼンテーション、融資検討のための資料提出など、多くの作業が発生します。

スタートアップという、まだ人に支えてもらわないといけない立場である会社が、大きな金額を借り入れるためには当然に必要な作業なのですが、こういった作業を「タスク」としてこなす方が多いのも事実です。

スタートアップがデットファイナンスをする際には、「支援してもらう」立場であることを忘れずに、「何をどう伝えたら、まだ成長途中の我々を支えたいとレンダーに思ってもらえるか」を常に謙虚に考えて、「当然のことを徹底的にやり切る」アクションを取ることが必要です。

「連絡が来たらすぐに返事をする」「すぐ返事をできなければ、数日欲しい旨だけすぐ伝える」「MTG前には目的・伝えたいこと・聞きたいことを明確に握っておく」

こういった「当たり前のことを当たり前にやる」のは一見簡単に聞こえますが、当たり前を「徹底的に突き詰める」ことを本気でやり切れる人は周りにどれだけいるでしょうか。

実は多くないはずです。

そして「融資で借りたお金を返済する」のは、まさに「当たり前のことを当たり前にやる」の代表例です。「当たり前のことを徹底的に突き詰めてくれる会社・人」というのは、レンダーからすると「絶対返してくれそうな人」になります。もちろん「絶対」はないのですが、デットファイナンスにおいては、「当たり前のことを当たり前にやってくれるか」は、「自分たちが貸したお金を返してくれそうなのか」という点と評価がリンクすることを意識して、当たり前を突き詰めることをチームとして徹底しました。

大事なこと1つ目:当たり前を徹底的に突き詰めよう。当たり前を突き詰めてアクションすることは、「お金を返してくれそうか」という評価にリンクする

大事なこと2つ目:「会社vs会社」の前に「人vs人」であることを忘れない

今回の融資でいえば、「レンダーvsスマートバンク」という関係ではありますが、レンダーの担当者も人間ですし、プロジェクトを進めている我々も人間です。なので、そもそもプロジェクトを進めている我々が人間として好かれないと、スマートバンクを応援してもらうことはできません。

今回のプロジェクトを進めるにあたっては、些細なことでもいいのでどういった形でご担当者の方の役に立てるのかを常に考えていました。

例えばですが、稟議プロセスについて細かく質問すると、「こういう案件なら、こういう決済ルートを通る」など詳細に教えていただけます。

ご担当者の方が稟議をあげる時に「こんな案件を稟議に持ってきやがって」と万が一に上席の方に思われてしまったら、せっかく当社の案件を取り上げてくれたのに、ご担当者の方のメンツを潰すことになってしまいます。

「レンダーは何を重視して判断するのか」「稟議の際に、何を重点的に見るのか」「どういう資料を稟議の際に担当者は準備しないといけないのか」などを細かく確認し、準備しないといけない資料を自主的に作って渡したり、質問についても背景を確認し、背景に合わせた回答や資料を添えることを徹底していました。

「好きな方には、なるべく良い気持ちでお仕事してもらいたい」という「人vs人」の意識を常に大事にしてアクションをとっていたことが、結果につながったのではないかと考えています。

世の中には「サラリーマンリスク」というネガティブな言葉があります。我々の案件がご担当の方にとって「サラリーマンリスク」にならないように、願わくば「サラリーマンベネフィット」というポジティブな存在になれるように、今後も金融機関様とのお付き合いを進めていきたいと思っています。

大事なこと2つ目:会社間の取引である前に、人との取引。自社案件を進めていただいていることの感謝を胸に、ご担当者の悩みや課題に先回りで対応しよう

大事なこと3つ目:「事業を伸ばすために活動している」意識

CFOにも色々なタイプの方がいますし、色々な特徴の方がいます。異なる見解は勿論存在すると思いますが、個人的にC職を定義するのであれば「自分の得意分野から事業を伸ばすことに貢献できる人」になります。

全てのアクションは事業を伸ばすために存在しています。事業のトップラインに貢献できていない・コミットできないと思ったら「CxO」と名乗るのをやめた方がいいのではないか、と私は思っています。

経理・財務も含めていわゆる「バックオフィス」と言われるチームについても、「自分たちの活動が事業を左右させる」という気持ちを持って日々のアクションに取り組むことを、スマートバンクでは意識しています。

人事・採用チームは「事業を拡大するための人を集めている。集められなければ事業は停滞・減速する。」と本気で思っていますし、コンプライアンス・チームは、「今のTAMを維持するため、新しいTAMを拡大するための下地を作っている。作れなければ、非連続的な成長はできない。」と思っています。

コーポレートチームであろうとも、全てのアクションは「事業を伸ばす」ために取っているという意識を持つ

日々のアクションに「事業」を意識する場合、当然の帰結として事業構造を深く理解しないとパフォームすることはできません。自社のロイヤルユーザーは誰か、自社サービスで何が評価されているか、何が改善点と指摘されているか、今後どう事業を伸ばしていく方針なのか。これらの情報を人の受け売りで薄く語るのではなく、自分の頭で理解し、自分の言葉で説得力を持って説明できないと「事業への貢献」はできません。

もちろん簡単なことではないですが、コーポレートチームの各メンバーにも、「自分の頭で事業構造を理解する」状態に到達することを求めています。深い事業理解から紐解かれたオリジナルな説明には「言霊」が乗り、説得力を持つようになるのです。

大事なこと3つ目:「事業を伸ばすためのアクションである」ことを意識しよう。事業を深く理解していなければ、説明に「言霊」は乗らない。

大事なこと4つ目:GRIT

そもそも論、社会人としての付加価値はどこにあるでしょうか?

それは「自分にしかできないことをやること」にあると私は考えています。では、「自分しかできないことをやる」という点で大事なのは、スキルでしょうか?社会人経験が少ない若い方、中途転職の方は「スキル」がないから付加価値が少ないのでしょうか?

決してそんなことはないはずです。

冒頭お伝えした通り、単なる知識・経験の有無の違いでしかない「スキル」は、自己を差別化するという点で価値が薄いと私は思っています。

社会人としての真の付加価値とは、「みんながやらないことを、やること」「諦めてしまう部分を、一歩・二歩踏み込むこと」であると私は思っています。新卒の方でも、他の人が諦めてしまうことに1つや2つ「何かもう少しできないか」を考えて喰らいつける人は、「その人にしかできない」ことをやれているし、単に社会人歴が長いから色々知っている人よりは高付加価値な人材だと私は思っています。

デットファイナンスにおいていえば、ご担当者から連絡が返ってこない時に「あそこは反応が悪いから、ダメだな」と判断を下すことに付加価値はありません。

連絡がないなら「状況いかがですか?」とリマインド。リマインドにも返事がないなら電話。電話にも折り返しがないなら、上席に電話してもらう。それでも返事がないなら上席を連れて先方のオフィスを訪問してみる。

諦める前に、取れるアクションはたくさんあるはずです。SHOW THE GRIT!

大事なこと4つ目:GRITを示そう。誰もが諦めてしまうところを一歩二歩踏み込むことが、社会人としての付加価値だ。

大事なこと5つ目:「借りたらおしまい」ではない

デットファイナンスについて過去私もアドバイスを頼まれたり、逆にアドバイスを聞いたりしたことがあるのですが、大体みなさん「調達できました!」で終わることが多いことに、違和感を持っていました。

スタートアップ側からすると、確かに着金は一つのゴールですが、レンダーからすると着金は「スタート」です。そもそも、好きな担当者からお金を貸してもらえたなら、貸してもらった後に担当者が困らないようにするのも人として当然ではないでしょうか。

当社は、ご担当者の方が困らないように、融資いただいた後も毎月レポートを送ったり、何か不明なことがあればいつでもMTGをして、なるべく自分たちの事業理解を深めてもらうように心がけています。

スタートアップなので、もちろん事業計画通りにいかないこともあります。ただ、「とある部分が事業計画通りではない」という事態が生じた場合、担当者が青天の霹靂としてふと気づくのと、借り手側が毎月レポートを送って経過を説明しているのとでは、天と地との差があります。

人と人との関係として始めた以上は、借りた後の説明責任を果たすのもまた、人と人の関係として当然の所作ではないかと思っています。最後の点は借り終わった後の話ですが、このような姿勢を評価いただいた結果も、11.5億円の調達につながったのではないかと考えています。

大事なこと5つ目:「借りたら終わり」は大間違い。借りた後から関係は始まる。説明責任を果たそう。

最後に

今回、振り返ると精神論みたいな話が多くなってしまって恐縮です。。。笑

ただ、「学べばできるようになるスキル」よりも「人としての態度・誠実さ(コンピテンシー)」に価値があると本気で思っていますし、スキルではなくコンピテンシーで差別化できた結果、11.5億円という調達をエクイティファイナンスと切り離して実施できたことも、コンピテンシーの重要性を物語っていると考えています。

振り返ってみると、特別に強力な「魔法の何か」があるわけではないなと改めて感じます。

ありもしない魔法を探すのではなく、「やるべきことを徹底してやる」「ヒトとしての礼儀を尽くし切る」ことの小さな積み重ねが最後魔法として機能することを胸に、ぜひ取り組んでいただければと思います。

最後二点だけ。

私も含めて、当社メンバーはスタートアップ界隈がみんなで一緒に成長できればいいと本当に思っています!今回全く触れなかったスキル面で質問したいこととかあれば、いつでもコンタクトしてください(X:@Yshimogawara)!(スキル面の話がないと、こういう記事に価値はないだろ!みたいなFBも大歓迎です笑)

あと、当社では一緒に働いていただけるメンバーを募集しています!バックオフィスでご興味ある方もそうですし、それ以外の部門の方でも一緒に働いてみたいなと思っていただいた方がいれば、ご応募お待ちしています!

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