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B/43を運営する株式会社スマートバンクのメンバーによるブログです

ユーザーが”本当に欲しいもの”を見つけるためのコンセプトテスト

こんにちは。スマートバンクでプロダクトマネージャーをやっているinagakiです。

ユーザーの抱える課題に対してどういった方向性で解決すると良さそうかを考えたく、コンセプトテストを実施してみたのですが、良かったこともあれば難しいなあと感じる部分がありました。

どうしたらユーザーが”本当に欲しいもの”を見つける機会として、コンセプトテストを上手に活用できるか考えてみました。

前提

今回は新しい取り組みをするプロジェクトにおいて、ある程度定義されたユーザー像とその課題に対して、解決策の方向を探るという目的で実施しました。

事前にユーザーを理解したり、課題を見つけるためのリサーチを行なっていたため、チーム内では筋が良さそうと思える案がいくつかある状態でした。コンセプトテストを通じて、方向性を決める材料を集めつつ、具体の施策に落とし込んでいく際の”勘所”をつかめると良さそうだと思っていました。

対象者としてターゲットユーザー像に近い方およびそれとは異なる傾向の方にご協力いただき、N1インタビューの形で実施しました。

おおよそ60分間のインタビューで、前半はその方自身やライフスタイル、お金に対する考え方などを理解する質問をさせていただき、後半でコンセプトを提示しながらお話を伺いました。

本音を引き出すために工夫したこと

過去コンセプトテストを実施した際に感じていたのは、対象者の反応が本音なのか、そうでないかを見分けることの難しさです。

お声がけしてインタビューに協力していただいているという構造上、対象者の方も気を遣っていただきやすく、本音に関わらず良く言ってくださる傾向があります。また、良くないと思っていても、言葉を選んでマイルドにお話しいただくため、良くないと感じた温度感を掴みづらかったりします。

他にも、イメージをお伝えするためにモックを提示するコンセプトテストの場合、モックがリアル過ぎるほど聞きたいポイントからずれてしまい、コンセプトに対してでなくモックの出来に対するフィードバックをいただいてしまったりします。

少しでも本音を知れるようにするために、今回は以下のような工夫をしてみました。

最初からモックは見せず、テキストで見せる

当初は最初からモックをお見せしながらお話を伺う予定でした。しかし、事前にリサーチャーのHarokaさんから、「コンセプトの良し悪しでなくモックの良し悪しに話がブレてしまうかも」というフィードバックをいただきました。

確かになあということで、まずはテキストでコンセプトをお伝えして評価していただいた上で、モックをお見せするという流れにしました。

ただ、テキストにした分イメージが湧きづらくなるため、お知らせ文章のように書いてみることにしました。

文章を書く際には、「Think N1構文」(完全な造語ですが)という、スマートバンク社で施策検討の際に用いられるThink N1シートで用いられる文章構造を活用し、シンプルにユーザーの課題や解決策を書いてみました。

Think N1シートの価値仮説を整理する欄抜粋

読んでいただいた際に、ユースケースや課題に共感してもらった上で、解決の方法(コンセプト)をどう感じてもらえるかがポイントだと思います。

相対的に見せて反応を引き出す

コンセプトテストでは「どのモックが良いか?」「モックをどう改善すると良いか?」といった論点のズレが起きがちです。あくまで解決策の方向性を見定めるという目的を踏まえ、あえて各案を深ぼらないというやり方を採りました。

案をお見せして3段階で評価していただくというのを複数案で繰り返し、全体を振り返って相対的に感じたことをお話しいただきました。

また、同じコンセプトでもモックを複数用意し、そのコンセプトをどの角度から捉えて良いと感じたのかを把握しようとしました。

左側がテキストのもの、右側がモックのもの

さらにはテキストでお見せした際とモックをお見せした際の差分についてもヒアリングし、どんな要素や機能を期待するのかという点を引き出すことで、方向性の解像度を上げやすくなりました。

優しいロボットになる

お話の聞き方にも工夫を取り入れてみました。それは「優しいロボットになる」という姿勢でお話を伺うことです。

これはミラティブ社で取り入れられているもので、対象者の方が意図せず気を遣ってしまうことを防ぐために、あえて会話を盛り上げず淡々と進めるというものです。

(以下のPodcastでは他にもミラティブ社のインタビューの工夫を知ることができます。ぜひ聴いてみてください)

open.spotify.com

ロボットのようにインタビュアーの感情は一切いれず、淡々とお話を伺います。もちろん失礼のないように表情や口調は丁寧にします。

その結果、対象者の方の本当の反応とそうでない反応の差が見やすくなったようになります。こちらが淡々と進めていても、対象者の方のテンションが上がったふとした瞬間は、本物の反応の可能性が高いなと感じました。

最後、本音かどうか判断するのは”感覚”

今回のコンセプトテストを通じて、当初チームで持っていた推し仮説に良い感触を持つことができました。

対象者の方のリアルな反応を見ることができ、持っている仮説に対する自信が高まりつつ、今後施策を詰めていく際のヒントも得ることができました。

一方で、対象者の方の反応をどう評価するかという難しさも実感しました。

様々な工夫をして本音を引き出そうとしてきましたが、やはり明確に本音だとわかることはなく、評価にはインタビュアー側の主観も影響してきます。その中でも今回「良い反応だった」と判断する基準として、対象者の方のテンションが上がっていたかというポイントを注視しました。

テンションが上がる反応とは、

  • 質問に対して即答になる
  • 声のボリュームやトーンが急に上がる
  • 表情が変わる
  • 少し前のめりの姿勢になる
  • 論理的な説明ではなく、感覚的だが納得感のある説明をする

などの特徴がありました。

こうした反応がある上での「良いですね」は本音ではないかという判断をして、コンセプトに対する評価をしました。

コンセプトテストは背中を押してもらうもの

一方で、こういった評価はかなり感覚的ですし、主観が混じるものです。企画者の意図通りに解釈を曲げてしまう罠に陥る可能性もあります。

基準として明確化しづらいものではあるので、どう組織内でノウハウ化するかが難しいなと感じました。

こうした特性を踏まえたときに、コンセプトテストで得られた「結果」をどのように捉えると良いのでしょうか?

今回実施してみて、この結果だけで方向性を決めるというものではなさそうだと思いました。コンセプトテストに答えを求めるのではなく、予め持っている仮説に対する後押しを得たり、方向性を深めていくための材料を得るためのものとして捉えるのが良いのではないかと感じました。

みなさんがコンセプトテストをどのように活用しているのか、ぜひ教えてください!

さいごに

スマートバンクではとことんユーザーと向き合って、本当の課題を捉え、それを解決するプロダクトを作ろうというカルチャーがあります。N1インタビューをはじめとした、リサーチを活用しながらのプロダクトづくりに興味があるプロダクトマネージャーの方はぜひお声かけください。

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