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不確実な状況下で本当に意味のある戦略を作る方法:戦略ファウンドリー 基礎編

こんにちは!スマートバンクでビジネス本部の責任者をしている赤池(@chihaya_akaike)です。

突然ですが皆さん、リチャード・P・ルメルトという方をご存知でしょうか?『良い戦略、悪い戦略』などの戦略論や経営論に関する本の著者であり、エコノミスト誌の「マネジメント・コンセプトと企業プラクティスに対して最も影響力ある25人」の1人としても選出されています。

スマートバンクには #z_book という書籍をオススメしたり、共有するチャンネルがあるのですが、そこでCXOの takejuneさんがルメルト氏の新刊『戦略の要諦(The Crux: How Leaders Become Strategists)を紹介してくれました。CEOのshotaさんやCFOのshimoさん、PM陣などなど社内でも結構反響がありました!

この本には、著者の戦略論に加え、戦略を立案と実行をするための「戦略ファウンドリー」というプロセスについても書かれています。特にスタートアップが直面する課題や、不確実性にどう向き合うべきかについて、とても参考になる内容でした。そして、takejuneさんの投稿をきっかけに、「スマートバンクでも戦略ファウンドリーを実践してみよう!」という流れになりスマートバンク流で実施をしてみました!

戦略ファウンドリーを実際に開催してみて、企業のフェーズに関係なく活用できる実践的な戦略策定のプロセスだと感じたので、ルメルト氏の戦略論、そしてスマートバンクで実施した戦略ファウンドリーのワークショップの内容についてまとめてみようと思います。戦略の考え方や会社のメンバーを巻き込んだ戦略作りのプロセスの参考になれば幸いです。

1つの記事で収めるつもりだったのですが、少々長くなりそうなので、

  • 基礎編:ルメルト氏の戦略論と戦略ファウンドリーの概要
  • 実践編:スマートバンクでの戦略ファウンドリーの実施と振り返り

という形の2部構成でお送りしたいと思います!

戦略とは会社の命運を分ける課題と向き合い続けること

『戦略の要諦』を読んで個人的に最も印象的だったのは、ルメルト氏の「戦略」の捉え方と、事業課題にどう向き合うかの考え方です。戦略の定義は様々ありますが、ルメルト氏は、会社の「ありたい姿」から目標や計画を立てるだけでは「戦略」としては不十分だと指摘しています。

戦略を「わが社は将来こうありたい」といった類の固定的な目標や願望とは考えていないことだ。言うまでもなく勝利や利益や成功に対する野心はあるにしても、戦略はそれを叶えるためのものではない。戦略とは実際に組織の直面する困難な課題と好機にどう取り組むか、それを考えることだと理解している

事業を成長させ会社として成功を収めるということは途方もなく困難であり、選択肢を誰かが示してくれるわけでもなく、どのような行動や施策がどのような結果に結びつくか分からない状況の中で判断を下す必要があります。その上で、ルメルト氏は戦略を以下のように定義しています:

戦略とは困難な課題を解決するために設計された方針や行動の組み合わせであり、戦略策定とは、克服可能な最重要ポイントを見きわめ、それを解決する方法を見つける、または考案することにある [...]

戦略を立てることによって、すべき目標が定まる。正しい戦略策定は、まず直面する課題を認識するところから始まり、次に課題を解決するうえで乗り越えるべきポイントを理解する。それによって方針や行動や具体的な目標が導き出されるなら、それはよい戦略策定である。

戦略を立てる上でのファーストステップは、会社の現状を正確に診断し、最も重要かつ解決可能な課題を特定することだと著者は主張しています。たとえば、私自身「スマートバンクが飛躍的な成長を遂げるために解決すべき課題は何か?」と問われると、事業やプロダクト、組織など様々な課題が思い浮かびます。この記事を読んでくださっている方々の中にも同じように思考をする方がいらっしゃるかもしれません。しかし、戦略策定のファーストステップにおいて重要なのは、多くの課題の中から会社として最も重要で解決すべき「核心的な課題(Crux)」を見つけ出すことだとルメルト氏は述べています。様々な課題と日々格闘する中で、会社が置かれる状況を正しく捉えた上で、会社の命運を分け、次のステージに進むために妨げになっている最も重要な課題が戦略の出発地点になります。

そして、戦略は企画するだけでは意味がありません。多くの企業が陥りがちなケースとして、机上で立てた計画が十分に実行に移されず終わってしまうことです。ルメルト氏は、戦略はその課題を解決するために必要な具体的な行動計画まで含めて初めて成り立つとしています。よって、戦略策定のセカンドステップとしては、定義をした核心的な課題に対して会社として現実的に取り組める課題なのか判断し、実際に動き出すための具体的な行動を策定することです。この行動計画が具体的であり、アクショナブルであることで、組織全体が同じ方向に向かい、初めて戦略を推進し会社の成長に結びつけることができます。

私が理解したルメルト氏の「戦略」とは、会社として市場で優位に立ち、持続的な成長を遂げるための問題解決のプロセスです。特にスタートアップを取り巻く環境は目まぐるしく変わり、課題が次々と発生します。その中で選択と集中を行うことは勇気がいる決断です。会社としての状況を的確に捉え、最も重要で解決すべき課題を見極めて解決に取り組むプロセスを繰り返し行うことで、成功に一歩ずつ近づくことができると考えています。

戦略を生み出すプロセス:戦略ファウンドリー

会社にとって最も重要な課題を特定し、その上でアクションプランを作るルメルト氏の戦略策定のためのアプローチが戦略ファウンドリー(Strategy Foundry)です。"Foundry"(鋳造工場)という名前が示すように、戦略ファウンドリーは、会社の状況や外部環境などの「材料」から、戦略という「製品」を生み出すプロセスと捉えることができます。

本記事では、戦略ファウンドリーの大まかなプロセスを簡単にご紹介し、次回の記事でスマートバンクがどのようにこのプロセスを実践したかについて詳しくお伝えしようと思います。

戦略ファウンドリーは、CEOを含む会社の経営メンバーと、事業の意思決定に関わる主要なメンバーが参加し、ワークショップ形式で行われます。目的は戦略の策定です。具体的には、会社の命運を左右する最も重要な課題を特定し、その解決に向けたアクションプランを策定することがゴールです。

戦略ファウンドリーとは、少人数の経営幹部が集まって課題を検討し、最重要ポイントを見きわめて、課題解決のための一貫性のある行動計画を立てるプロセスのことである

私の理解では、戦略ファウンドリーは次の3つのステップに分けられます:

  1. 会社の状況の診断
  2. 課題の洗い出しと核心的な課題の特定
  3. 解決の方針と具体的なアクションプランの作成

1つ目のステップは会社の状況の診断です。課題を特定しその課題を解決するための方法を定めるためには、戦略ファウンドリーに参加するメンバーが同じ目線で議論できる状態を担保する必要があります。そのために会社が置かれている状況を定性・定量、そして内部・外部といった異なる視点で分析し、会社の強みと弱みの把握、そして今後訪れるチャンスや脅威などについて議論を行い認識を合わせます。

参加者が会社が置かれる状況を深く理解した上で、2つ目の核心的な課題の特定のステップに進みます。このステップでは、参加者はもちろん、事前にアンケートやインタビューなどで会社メンバーからも意見を吸い上げた上で、「課題の洗い出し → グルーピング → 細分化」を繰り返しを行います。

参加者が考える会社にとって重要な課題の種類や粒度は様々なので、課題を洗い出し類似課題をグルーピングをした上で、「その課題はなぜ重要なのか?」や「その課題を細分化するとどのような要因に分かれるのか?」という問いを投げかけ、表面的な課題の裏に潜む真因を突き止めます。その上で、会社として成長をするために今最も重要で解決をする必要がある課題を優先順位をつけて特定をします。

3つ目のステップはアクションプランの立案です。特定をした課題を解決するために、現状のリソースを踏まえて実現可能な行動計画を立てます。その際に重要なのは、机上の空論にならないように、アクションプランを持ち帰って推進をするメンバーを戦略ファウンドリーの参加者の中から決めて、明確にアクションのマイルストーンとスケジュールを設定することです。例えば、具体的なHowまで参加者で決め切るのが難しい場合、誰がいつまでに行うのかとそれをどのタイミングで共有をするのかを予め合意しておくことで、推進力を持って課題解決に取り組めます。

なぜスマートバンクで実施をしようと思ったのか

最後になぜスマートバンクで戦略ファウンドリーを実施するに至ったのか簡単に話したいと思います。きっかけは冒頭で記載した通りCXOのtakejuneさんが『戦略の要諦』の書籍を共有してくださったことなのですが、戦略ファウンドリーを実施しようと思った理由はスマートバンクが自分たちの課題と向き合い、選択と集中をすることを必要としていたからです。

これまでスマートバンクで事業戦略や計画を策定する際に、もちろん会社の状況や課題も考慮しますが、会社として目指す姿とそれをどうすれば実現できるのかという視点が出発地点になっていました。

そんな中、改めてスマートバンクとして直面する課題を多面的に分析をして、選択と集中の観点で今最も自分たちがリソースを集中するべき課題と向き合うことの重要性を感じました。新たなアプローチで会社の成長と向き合うことで、これまで見落としていた成長のドライバーを特定できるのではないかと考え、戦略ファウンドリーを実施に至りました。

最後に

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。戦略に対する考え方においては絶対は正解はないと思いますが、少しでも今後戦略について考える際のヒントになっていたら嬉しいです!今回は基礎編という形で、ルメルト氏の戦略論と戦略ファウンドリーの概要についてまとめてみました。次回はスマートバンクでどのように戦略ファウンドリーを実施したかについて、実践的な内容をお届けします。そちらの記事が公開されたらXで共有予定です!

もっと詳しく知りたい方や追加でご質問などあれば、お気軽にX(@chihaya_akaike)やFacebook(chihaya.akaike)でご連絡ください!

そして、スマートバンクでは一緒に作る事業開発のメンバーを募集しています!少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ事業開発の採用ページをご覧ください。カジュアル面談も受け付けているので、お気軽にご応募ください 🙌

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