スマートバンクでマーケティングを担当しているtsuchiyaです。今回は2023年10月に実施したショートドラマ施策の裏側について書きたいと思います。
B/43 ペアカードの認知拡大を目的として、ショートドラマの配信を行いました。 制作は日本におけるショートドラマの第一人者である、ごっこ倶楽部(敬称略)に依頼し、B/43 ペアカード利用者の100件以上のユーザーインタビューを元に、ペアカードを導入する前に実際にあった2人の揉め事などを元にした2本のショートドラマを作成しました。
「愛情チャージ」 140万再生 https://vt.tiktok.com/ZSNjgdKqU/
「B/43があれば、、、」 78万再生 https://vt.tiktok.com/ZSNjgFseT/
こちらの動画は、配信10日間で合計再生回数200万回を突破し、配信期間におけるサービスサイトへの検索流入数は 65.2% 増加しました。
この記事はなぜショートドラマという施策をやろうと思ったのか?良し悪しを判断する指標はどのように設定したのか?具体的な制作の内容などについて書いてありますので、サービス認知拡大のための規施策を検討している方に参考にしていただければ嬉しいです。
- なぜショートドラマ施策を実施しようと思ったのか?
- なぜごっこ倶楽部だったのか?
- ショートドラマの良し悪しの基準づくり
- ショートドラマ制作の中で意識したことや学び
- ショートドラマへの反響とこれからの可能性
なぜショートドラマ施策を実施しようと思ったのか?
まずは、私がショートドラマ施策を実施したいと思った背景や目的についてです。
スマートバンクが提供している、「カップル・夫婦のための共有カード B/43 ペアカード」は、一度使ってもらえるとその後の継続率は非常に高いのですが、使い始める前にその価値を強くイメージすることがなかなか難しい説明コストが高いプロダクトだなと感じています。 b43.jp
B/43 ペアカードの利点は、お互いが入金できる共有の口座にそれぞれのカードが発行されるので、割り勘や立て替え精算の手間がなくなり、リアルタイムにお互いがスマホで簡単に支出を確認できるというところ。
またそういった機能的価値を感じていただいたユーザーさんが実際に利用していただくと「お金のことでケンカすることがなくなった」「これまでは言い出しづらかったお金のことがちゃんとはなせるようになった」というような2人の関係性がうまくいくようになったという便益を感じてもらえるようになります。
例えば、相手が買い物してくれていることがリアルタイムでわかるので、家事をしてくれたことに対しての感謝や今月これだけ支出減らせたよという頑張りが伝わったり、お互いの支出がスマホでリアルタイムで可視化されることでお金の話をしやすくなるなど。
「そういった良いことがあるよ!」という訴求を数秒しか見られない獲得目的広告で行うのは困難です。すでに強い課題がありB/43 ペアカードのようなサービスを探している顕在層にはアプローチできますが、探すほどではないけどなんかもっといいやり方が無いかなと思っている潜在層にリーチすることは難しく、どういった方法であればそのような方にペアカードの魅力を知ってもらえるのかといったことに悩んでいました。
一定の秒数を見てもらえるコンテンツが必要だがそれはいったいなんだろうか?
B/43 ペアカード のユーザーさんは25-34歳の割合が多く、SNSではInstagramとTikTokが相性が特に良いです。そこで長尺でみられているコンテンツはなにか?と思ったときに、ショートドラマというカテゴリがあることを知りました。 再生回数が数十万から数百万ぐらいの動画がいくつかあり、さらにいいねやコメントなどのエンゲージメントも高く多くの視聴者がしっかり見ていることがわかりました。 この方法だったらB/43 ペアカードがどういった課題を解決できるプロダクトだということを知ってもらえるのではないかと思いました。
なぜごっこ倶楽部だったのか?
ご存知の方には言わずもがなという感じですが、ごっこ倶楽部はショートドラマというジャンルを確立した先駆者です。
こっご倶楽部 TikTok アカウント https://www.tiktok.com/@gokko5club 他のアカウントでも100万再生以上のショートドラマ動画はあるにはあるのですが、ごっこ倶楽部がすごいのは動画の平均再生回数が193万、100万再生以上の動画が52.9%以上という圧倒的実績。しかも、何本か投稿して数本が伸びるのではなく、すべての動画が伸びるので、再現性高く多くの人に見てもらうための要点を確実に抑えた脚本・演出ノウハウを持っていることがわかります。 「いやいや、アカウントのフォロワーが130万人いるからそれぐらいいくでしょ」と思う方もいらっしゃるかもですが、ごっこ倶楽部がアカウント運営を担当しているパーソル(PERSOL)さんのTikTokアカウントはもともとフォロワーゼロから立ち上げていて、それでも再生数が100万以上ある動画がたくさん並んでいる実績をみて、初のショートドラマの取り組みをお願いするならごっこ倶楽部しかいない!と確信しました。
パーソル(PERSOL) TikTokアカウント https://www.tiktok.com/@persolgroup
ショートドラマの良し悪しの基準づくり
タイアップ動画の中にはネタ要素多めだったり単にその出演者のことが見たいだけというような、動画の再生数は多かったが、サービス利用にはまったく繋がらないというケースも一定あるかなと思います。
ごっこ倶楽部の担当者の方は単に視聴が伸びればそれでよいという考え方ではなく、ショートドラマという表現において再生数を出しつつも、しっかりサービス利用につなげるためにはどうしたらよいかという議論ができたので、まずはお互いにどういった結果が成功といえるのか指標をすり合わせました。
「サービスに対して興味を持ってもらえた」という状態が視聴者のどういう行動だと定義するのかということが論点になるのですが、TikTokのオーガニック投稿だとURL掲載によるクリックが追えないので、今回はサービスサイトへの検索流入数を「B/43 ペアカードに興味をもった」という定義にしました。
今回定めた指標は下記でした。
動画がしっかり見られたか?
- 再生数
- 15秒以上再生数
- 完全視聴
- いいね数
動画を見てくれた視聴者がペアカードに興味を持ってもらえたか?
- コメント数(コメント内容)
- 保存数
- サービスサイトへの検索流入数
検索流入数以外の具体的な数値については、後日ごっこ倶楽部の方と一緒に公開する予定ですのでお楽しみに。
ショートドラマ制作の中で意識したことや学び
制作の流れ
- オリエンテーション
- 脚本制作
- 動画撮影
- 仮編集
- 本編集
- 投稿
インフルエンサータイアップ投稿の流れと同じではあるのですが、ペアカードはどういう属性の人が使っていて、どのような課題を解決していて、手に取るきっかけや使ってみて満足している理由などといった事前情報をしっかり伝えるためのオリエンテーションに時間をかけました。
どのような情報を伝えたかは 同じマーケ担当の村田さんの記事にありますのでこちらをご覧ください。 blog.smartbank.co.jp
実際の脚本(初案)を公開します。 広告っぽさ、サービス訴求が出た瞬間に視聴者が離脱してしまうので、どのタイミングでどのようにサービスを見せるのか、どこまで説明するかというのはかなり議論しました。
この構成案(セリフ)をみると情報量が少なくて色々情報を追加したくなったのですが、専門家が作ったシナリオに「もっとこうしてください」というざっくりとしたリクエストをするのはどうかと思ったので、まずは自分でもセリフを書いてみました。
そうすると気づくことが色々あり、セリフが長すぎて会話っぽさがなくなってしまったり、カットやシーンを多くして飽きさせないというのもポイントなので、カットとカットをつなぐためのセリフなども存在し、「あーここのセリフはここと繋がってるのか」とわかることもありました。
また、このシーンはセリフはないが演技はあるので、演技でどこまでカバーするのか、「なにこれ?」とわざわざ言わずに表情の演技だけで成立させるシーンなどもあります。今回は制作側と得たい結果をしっかり共有できていたので、その上で最終意思決定は専門家にお任せするのが最も良さそうだと思いました。
「もっとこういう感じにして欲しい」といった曖昧な指示や「サービスの説明はこういう内容でこの表現を必須で入れてください」といった超具体的な謎のセリフの依頼は避けたいと思っていたので、一度いただいた草案を元に「このプロダクトはこういった人の課題をこう解決しているので、ここはこっちの表現が良さそうに思えますがいかがでしょうか?」とフィードバックの背景と具体的な内容の提案をしました。制作側からすると広告主の依頼は断りにくかったりするので、最大限意図を伝えた上で「表現の最終決定は、制作側にお任せします」と言うようにしていました。お互いに意図がしっかり伝わった上で、変に忖度することなく、であればこういった表現のほうが良さそうですねという議論をすることができました。
セリフだけの脚本だけで意思決定するのはいろいろと不安になると思いますが、信頼できる相手にしっかり任せる、より良いものを作ってもらうために必要な情報をインプットするということに徹することが重要です。
ショートドラマへの反響とこれからの可能性
結果、2本の動画は配信10日で合計200万再生を超え、配信期間におけるサービスサイトへの検索流入数は 65.2%増加しました。単なる面白い動画に終わらず、どういった課題を解決できるのかということがコンテンツとして成立した上でしっかり伝わった結果、サービスを手にとってくれる方を増やすことができました。 prtimes.jp
コメント欄でも 「ペアカード使ってます!」 「同じことで悩んでます」 という書き込みが多数あり、パートナーとのお金についての悩みの話題で盛り上がっていました。 ごっこ倶楽部の動画は単にバズるのではなく、人間関係から生まれる様々な愛を主題としたショートドラマで視聴者に対して共感を感動を与えるという考え方が素敵で、ごっこ倶楽部のプロデューサーからプレスリリースにこのような嬉しいコメントをいただきました。
今回、スマートバンク様とコラボレーションさせていただきました。 この取り組みをご一緒したいと思った理由は、「B/43ペアカード」というプロダクトが、ごっこ倶楽部が大切にしている『日常で忘れがちな小さな愛』に気づくきっかけになれる、本当に良いソリューションだと感じたからです。『カードの通知で、パートナーが買い物をして帰ってきてくれていることに気づく』『ペアカードを持つことで、将来のことを真剣に考えるきっかけになる』など、機能を超えて、日常に溶け込み、大切な人とのつながりを強くしてくれるような存在になっています。 そんな愛のあるカードの良さが伝わるようなドラマを制作しましたので、是非ご視聴ください!
ショートドラマは、 WEB×SCREEN = WEBREEN(ウェブリーン)*1というカテゴリになるらしく、まだまだ可能性がありそうです!
まだ見ていない方がいれば、ごっこ倶楽部 x B/43 ショードラマ ぜひご覧ください!
「愛情チャージ」 https://vt.tiktok.com/ZSNjgdKqU/
「B/43があれば、、、」 https://vt.tiktok.com/ZSNjgFseT/
潜在層にリーチする認知獲得施策については、今後も新しいことにチャレンジしていきたいと思っていますので、ぜひ情報交換させてください。
質問、コメントあれば Nobu (@tsuchiya_no) / X にご連絡いただけると嬉しいです。
*1:WEBREENとは
WEB×SCREENが由来で、従来のドラマ表現とは異なる新たなジャンル。 TikTokやYouTube Shortsなど縦型ショート動画のプラットフォームにおいて、ストーリーを軸に、音楽(BGM・SE)、演技、ロケーションなどをかけ合わせて表現するジャンル。漫画領域におけるWebtoon、ゲームとソーシャルゲームの違いのように、今後新たなエンタメジャンルとして注目されている。