こんにちは!SmartBankでUXリサーチャーをしているHarokaです。
日々リサーチ活動をする中で、頭を悩ませるのが「情報の伝え方」です。特に、インタビューで得られた結果をどのように伝えたら良いだろう...と考えておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
情報を伝える際、スマートバンクでは、調査設計をリサーチャー以外のメンバーも交えて行ったり、実査をSlackのハドル中継してどなたでも参加しやすいようにしたりと、プロジェクト進行中に情報流通が進むように工夫しています。
一方、調査終了後は、先ほどのようなリアルタイムでの共有ができないため、資料を通じて情報を流通させることになります。調査結果まとめの資料(※)を作る際、またはその調査結果を別のメンバーが閲覧する際に気にかけているのが、「調査途中で得られたコンテキストが伝わるようになっているか」です。
調査結果まとめの資料は、FigJamのテンプレートとして公開していますので、併せてご覧ください。
※調査結果まとめの資料
調査結果テンプレート https://www.figma.com/community/file/1347451757504574822
このように、すでにあるテンプレートに入れるかたちで調査結果をまとめているのですが、意思決定の流れがなぞれたり、インタビューの場合だと対象者の背景がわかりやすくなっていたりと、いくつか伝わりやすくする要素がありそうです。
一方、あれもこれも伝えたい!と欲張ると全体感がつかみにくく、かえってわかりにくい資料になってしまうため、毎度、情報の緩急をどうつけるか?頭を悩ませています。
そんな中、同じチームの川勝さんが調査結果まとめを上手に仕上げてくださっているのに着目しました。 きっと、調査結果まとめを作る時、どうやって情報を取捨選択しているか、どのように情報を伝えるかのコツがあるはず......!
川勝さんは、スマートバンクでは調査結果まとめやリサーチカルチャーブックのような社内データベース構築やドキュメントの視覚化などの「資産化」を主に担当いただいています。実際の役割はこんな感じです。
私がリサーチ案件を進め、その調査結果まとめのパートを川勝さんにお願いすることがあるのですが、そこで実際にしていることを中心にお聞きしてみました!
調査結果まとめをどう作るか
ーー川勝さんは、情報を伝える際に可視化を重視しているように思います。そう感じるようになったきっかけはありますか?
リサーチャーは調査の中で、調査対象者の発言や調査から得た示唆など、たくさんの情報を取り扱います。それらの情報を、プロジェクトに参加をしていないメンバーに分かりやすく調査内容を伝えたり、ユーザーの生の声を伝えるなど、リサーチで得た情報を伝え広げることもリサーチャーの重要な役割だと考えています。
そう考えるようになったのは「プロジェクトを前に進めるためにリサーチ結果をどう伝えると効果的だろうか…」「ユーザーの声や熱量をいろんな人に伝えたいがすべてを伝えるには時間が足りない…🧐」と、リサーチの伝え方にもどかしさを感じたことがきっかけでした。
調査結果を可視化することでプロジェクトや会社へポジティブな影響があると考えています。
情報の見せ方や伝え方を試行錯誤する中で気づいた、調査結果を可視化するポイントをお伝えしたいと思います!
ーー調査結果を可視化するポイント、具体的に聞かせてください!
👤 伝えたい対象の設定
まず誰に伝えたいかを設定します。スマートバンクではプロジェクトに参加をしていないメンバーが後から調査結果を見た時に、経緯や結果が分かる状態というのを目的に設定しました。
✍️ 調査結果まとめの作成
- 調査結果の要点をプロジェクトメンバーにヒアリング
- 調査結果に関する情報を集める
- 叩き台を作成する
- プロジェクトメンバーに内容確認
- 最終調整
主に、この1〜5の流れで進んでいきます。
ーーなるほど。確かに調査結果まとめを作る時、必ず要点をメンバーにヒアリングしてくれていますね。
はい。たとえば、インタビュー調査だとインタビューの内容をただまとめるだけだと不十分だと思っています。
プロジェクトに参加していないメンバーが後から見て、経緯と結果が分かる状態にする必要があるため、リサーチに参加したメンバーの着眼点や主な議論の内容、どういった結果になっていったかを必ず確認しています。 そうすることで、インタビューの中でも特にどこを拾っていくといいかが見えてきます。
調査結果まとめを作る前は、各ユーザーの発話録やまとめにまず目を通します。 その上で、各インタビューのラップアップの録画を見返したり、主導したHarokaさんに話を聞きながら、どういったところを情報として立たせるかを考えます。
ーー調査結果まとめの第一歩は、実際にどういった調査になっているかを知りにいくことにあるんですね。
そうなんです。それが、情報を取捨選択するときに、情報を削ぎ落としすぎない工夫につながっていきます。
情報が多すぎる弊害として、せっかくまとめても使われなかったり、読み手をミスリードする恐れがあります。 また、情報を絞り過ぎて重要な文脈が落ちて無味乾燥にならないように、はじめから情報を限定するのではなく情報を網羅的に集めた上で絞り込みます。まとめること自体がゴールではなく、活用されるための情報に仕上げる「情報の取捨選択」が重要です。
情報を削ぎ落としすぎない3つのポイント💡
①伝えたい要点を1つに絞った上で取捨選択する✂️
最も伝えたい内容や象徴的なエピソードを絞り込み、全体を俯瞰した上で要点に関連しない要素は勇気を持って削除します。
要約と詳細と2種類のまとめを作ることで、要約には載せないが詳細にあることで安心して取捨選択をすることができます。(③にもつながります)
②メンバーが業務で活用しやすい形にして届ける🎁
リサーチだけで閉じないように、調査結果を業務に活かせる形にして届けることを意識しています。 リサーチを受け取るメンバーが業務でどのような情報が必要であるか理解をした上で、調査結果をまとめます。実際に内容を読んでフィードバックを受けることも重要です。
③利用目的に合わせて情報量を変える
全体像を掴む「要約版」と詳細な文脈を理解できる「詳細版」と2種類のデータを用意します。
情報を絞った「要約」で閲覧ハードルを下げながら、要約から詳細な発言にもアクセスできる動線を作ることで、深く知りたい人もカバーできるようにしています。
外に出せる情報が少なくて申し訳ないのですが、たとえば、こちらの調査結果まとめは、4月にリサーチチームに入られたmaayaさんと一緒に作りました。 図の右下にある「B/43の認知〜利用の流れ」などはステップごとに主な行動や発話を記録しています。
そこに、🔗人物像といったかたちで実際の発話がどんな文脈で行われたものか分かるよう、Notion(発話録)へリンクさせています。
他にも情報を削ぎ落とす工夫として
ボード1枚に制限することで自然に情報量を絞る
リサーチの全体像がスムーズに理解できるよう繋がりが自然か確認する (調査背景→調査目的→調査結果)
必要に応じて図解することで読み取り負荷を下げる ......などが挙げられます。
時間が経っても調査結果が振り返りできる、別のプロジェクトでも再活用されるような資産として価値が持てるように、リサーチャーにとって調査結果のまとめは重要だと考えるため、今後も工夫しながら作っていきたいです!
ーー なるほど!川勝さん、ありがとうございました!
最後に
調査結果まとめは、その調査を取り巻くプロジェクトのコンテキストを踏まえながら作り上げるものだと改めて理解が深まりました。 リサーチャーとして設計や実査進行がメイン業務となるかと思いますが、調査内容をメンバーにどう届けるのかについてもリサーチャーの腕の見せどころになる気がしています。
川勝さんは、チームメンバーにも分かるようにとドキュメントとして整備、新しく入社してくれたmaayaさんも同様にまとめられる型を作ってくれました。チームメンバーが増えてもリサーチの質が保たれるように今後も気づきをシェアしていきたいと思います!
スマートバンクでは、一緒に働いてくださる方を募集しています。ユーザー理解を一緒に進めたいとお感じの方は、ぜひお気軽にご応募いただければ幸いです!