こんにちは、プロダクトマネージャーの@more_tです。
カジュアル面談でプロダクトマネージャーの方とお話させてもらう中で、スマートバンクのプロダクトマネージャーが普段どういった業務をやっているかという質問をもらうことが多くあります。プロダクトマネージャーに期待する業務内容は会社によっても異なりそうだし、多くの職種と関わる仕事でもあるので、プロダクトマネージャーが行う業務と他職種の方が担当する業務の境界もケースバイケースだよねと感じました。そこで弊社のプロダクトマネージャーがどういった業務を行っているか整理してみることにしました。
記事が長くなったので先に結論を書いておくと、業務マップを作るとカジュアル面談でも使えるし社内のプロダクトマネージャーへの期待値をすり合わせるためにも便利だぞということをこの記事では主張しています。
プロダクトマネージャーは何をする職種?
プロダクトマネージャー(PM)がどういった業務を主として行うかについて一般的なPM像から考えます。PMについてはこちらの記事では下のように説明されています。
プロダクトマネージャーは、中長期の戦略立案、ビジョンの構築、プロダクトのビジネス、開発、UX(User Experience:ユーザー体験)のすべてのプロセスに携わり、ステークホルダーの承認を得たうえでプロダクトに関係する意思決定に責任をもつ。
ひとことで端的な表現が欲しいですね。
プロダクトマネージャーはプロダクトの企画から開発、意思決定まで責任を持つ。
とのこと、なるほど。なんとなく理解できますがこれだけでPMが実際にどういった業務を行うかのイメージは難しいですね。PMの業務は会社やプロダクトのフェーズやビジネスモデルなどに合わせて必要なことが異なるので、今回のようにひとことで理解しようとするのがナンセンスなのかもしれません。会社によるし、プロダクトにもよるし、それこそ強みが違うので人よってPMが指す内容が少しづつ異なるものです。先にスマートバンクにおけるPM業務について整理してみることにします。
PMの業務マップを作成
このように、スマートバンクにおいてPMが担当する業務範囲を「業務マップ」として図にしてみました。(※ プロダクト開発に関わるすべての業務の網羅を目的として作成していないので、この図上にない業務を行わないと言うわけではありません。)
上部の濃いグレーの部分で業務のフェーズごとに業務を大まかに分類しました。左方の事業戦略フェーズから右に進むに連れてプロジェクトのリリースや運用フェーズへとなるように配置しています。縦方向には色分けした分類でソートしています。色分けごとの意味合いは図の上部にも表記しています。
まず4つに色分けした「PMが担当」「PMが積極的に担当」「場合によりPMが担当」「PMは担当しない」を説明します。
- PMが担当
- 基本的にはPMが中心となって行う業務
- PMとしての強みが活かせる業務で他の職種が担当することは少ない
- PMが積極的に担当
- 他の職種が担当することも多いがPMが担当することも多い業務
- チームメンバーと協働したり、場合によって分担を行う
- 場合によりPMが担当
- 基本的には他の職種が中心となって行う業務
- PMが手伝ったり、業務量の調整などによりPMが担当したりする
- PMは担当しない
- 他の職種が担当し、PMが関わることは少ない業務
各フェーズに置いてPMが担当すべき業務とそうでない業務、またその間に位置づけられる業務についてマップから読み取れると思います。
PMのコアバリューは「要件定義」と「詳細設計」
「PMが担当」としたいくつかの業務を見ていきます。これらの業務はPMの強みを活かすものが多く、スマートバンクではこれらの業務を通じてPMとしてバリューを果たすことになります。フェーズごとにプロットすると分かりやすいですが「要件定義」「詳細設計」においてこれらの業務が多く存在しており、こうしたフェーズがPMが重宝されるフェーズであると言えそうです。 それぞれの業務でどういったことを行うか、業務概要はこちらの通りです。
- プロダクトロードマップの作成
- 中期の事業計画を元にプロダクトの価値拡張を時系列上で管理する
- プロダクトマネージャーが主導するがBizdevや経営とすり合わせて決定する
- 競合調査・分析
- 提供価値やビジネスモデル、事業規模などの観点で参考情報を得る
- 調査した情報をモックを作成するためのアイデアストックとしても利用
- Product Requirements Document
- いわゆるPRDのドキュメンテーション業務
- 一度作成して終わりというわけではなく、プロジェクトを進行する上で都度更新をかける
- 更新作業についてはPMのみならずデザイナーやエンジニアも関わる
- 細部仕様の検討については各専門職に意思決定の権限を移譲
- 価値定義の要件化
- プロトタイプや体験設計のための要件定義
- 価値仮説を満たすためにどういった要素が重要かを整理しデザイナーやエンジニアが参照できるようにする
- 制約の把握
- B/43のようなFinTechプロダクトは法律や金融プラットフォームによる制約の把握が必須
- 加えてカード事業者でもあるため、印刷や配送などのロジ周りについて担当することも
- PJやチームの施策優先度管理
- 施策を実施する順序などの優先度はプロジェクトやチーム内で判断しているので基本的にはPMがコントロールする
- 仕様詳細のドキュメント
- 作成したプロトタイプをベースに仕様の詳細を詰めていき、ドキュメントとして整理
- 品質管理
- プロトタイプや仕様詳細を検討するにあたり、もともとの目的から乖離してきていないかを都度チェックし、合目的性を担保する
- リリース戦略
- リリースにあたり機能を必要なユーザーに届けるためのプランニング
- リリース後の検証サイクルを回すためにもリリース時の初速を最低限確保する
- KPI監視
- チームのKPIを都度チェックし必要に応じて詳細の分析や打ち手のアクションにつなげる
スマートバンクではこのような業務をPMが中心となって担当しています。冒頭で引用したこちらの説明に照らして、そこそこ具体化した業務をイメージできるようになったと思います。 さきほどChatGPTに要約してもらった文章をふり返って、一般的なPM像から大きく乖離してなさそうで安心しました。
さまざまな職種とのコラボレーション業務
PMは様々なステークホルダーや開発チームのメンバーを巻き込みながら業務を進行します。そのためこうしたメンバーの業務と重なり合う領域が多く存在します。スマートバンクでは「PMが積極的に担当」「場合によりPMが担当」とした業務がそれにあたります。下図に一例としてどういった職種と協働して業務を行うかを表示しています。
スマートバンクでPMが各職種のメンバーとどのようにコラボレーションや分担して業務を進めているかご紹介します。
- 📊 Bizdev&経営陣 × PM
- 中長期的な事業やプロダクトの方針はBizdevや経営チームと議論を重ねて決定します。スマートバンクでは四半期〜半期ごとに事業計画をベースにプロダクトビジョンやロードマップをアップデートしています。またビジネススキームや他社とのパートナーシップなどはBizdevを中心に担当してもらい、プロダクトと仕様を整合させたりつなぎ込みの部分でPMが大きく関わるようになります。
- 🔎 リサーチャー × PM
- スマートバンクにはユーザーリサーチのためのUXリサーチャー職が存在します。プロジェクト開始のタイミングでユーザーの状況や課題を探るためリサーチャーと協働してユーザーインタビューなどの業務を行います。また専任のリサーチャーが存在することで、ユーザーインタビューなどの調査が常時走っています。「ユーザーってこういう時にどう考えているんだろう」のような疑問が出てきた時にリサーチャーに頼って直近のインタビューで確認してもらうことも可能です。
- 🎨 デザイナー × PM
- ユーザーに価値を届けるという観点でデザイナーは最も心強いパートナーになります。PMはデザイナー協働して価値仮説やそれらを要件化したものをベースにプロトタイプを行いデザインを作成します。
- 🔧 エンジニア × PM
- 価値の実現観点でエンジニアとのコラボレーションは必須です。プロトタイプや仕様を元にエンジニアと相談して実現可能性(フィジビリティ)や開発コストなどの観点を検討します。プロダクトの開発フェーズ以外でも定量分析やバグ対応などエンジニアと協働する業務範囲は広く存在しています。
- 🎯 PR・マーケ × PM
- 機能のリリースに先駆けてPRやマーケ職と相談しながら効果的なリリース方法や告知などの広報戦略について決めていきます。
- 💌 カスタマーサポート × PM
- 問い合わせやバグ対応はCSとPMが連携してプロダクトの価値改善や課題の解消に努めています。また新機能のリリース前にはユーザーに価値が分かりやすいよう協働してヘルプやリリースの告知作成を行います。
このように列挙したり、図で整理することで開発のあらゆるフェーズでPMが他の職種のメンバーと業務を分担・コラボレーションしていると改めて気づくことができました。こうした意味では多様な職種とのコラボレーションもPMのコアな業務と言えるかもしれません。
PMがどこまで裁量を持つかという現状とどこまで持つべきかという論点
業務マップを整理することでスマートバンクでのPMの裁量についてもクリアになったように思います。裁量について問題が発生する場合、基本的には「他の役割・職種との境界が定かではない」と言う状況だと思います。この観点で考えると「PMが担当」とした業務については明確にPMが裁量を持って推進しますし、「PMが積極的に担当」「場合によりPMが担当」とした業務については各役割・職種のメンバーと議論して、特にお互いの良さを引き出してコラボレーションすることでより良い意思決定を行うのが重要だと思います。
スマートバンクではPM・Bizdev・経営のメンバーで四半期〜半期ごとに事業やプロダクトのロードマップについて議論を行っています。各職種の観点で達成すべきラインの観点や実現性の議論を行う中でより良いアイデアや選択肢が発見されることもしばしばあります。こうしたやり方は経営メンバーが一方的に全社の意思決定をとるやり方と比較してより良い選択肢を作れていると感じます。「PMが裁量を持ちたい」という観点で考えると、事業の方針や計画などをPMが一存で決めることもありません。しかしPMの私からみて、現状のスマートバンクのやり方は戦略の検討フェーズとしては適切なメンバーを巻き込んで進められている実感があります。
蛇足ですが、多様な業務に関わることができるPMとしての注意点として、裁量を持ちすぎない/自分の意見にこだわりすぎないという観点も重要だと思います。ステークホルダーやチームメンバーとの関わりの中で、自分の業務が都度適切な範囲になっているかを振り返ると良いかもしれません。
業務マップの活用
この業務マップを作成するきっかけはカジュアル面談でPM業務を説明するためだけではありませんでした。スマートバンクではここ1年ほどで社員数が10数名から30名ほどに拡大しており、PMの人数も私1人だった頃から2名増えました。経験あるPMでも入ったばかりのチームではどういった業務を期待されているか、また他のメンバーとどのように協働すれば良いか分かりにくいこともあります。そのためチームに入るタイミングやチームを組成するタイミングで業務マップを元に各職種のメンバーとお互いに担当する範囲を確認しあうために利用することも想定しています。
そしてPMがフェーズごとにどういった業務を意識すれば良いか分かりやすいので、プロダクトマネジメントの品質向上も期待しています。業務ごとの色分けを設けることで、良いプロダクトを作っていくために、PMとして特にフォーカスすべき業務が可視化できていると思います。
将来的な活用法としてはスマートバンクのPMチームはスキルや経験が豊富なメンバーが在籍していますが、今後はジュニアなPMが増えて行くことを想定すると、育成や業務レクチャーといった観点でも活用できるかもしれません。
ここまでスマートバンクのPMの業務について説明してきました。全体的に簡潔な書き方になっているので、不明点やつっこみがあればぜひTwitterで教えてください。
まとめ
スマートバンクのPMはどういった仕事?
- PMは要件定義や詳細設計などの業務を中心に戦略から開発までの多くのフェーズで企画検討や意思決定を行う
- 各フェーズの中でPMだけで簡潔する業務は一部であり、エンジニアやデザイナーを始めとした多様な職種と業務を分担したりコラボレーションを行う
- ステークホルダーやチームメンバーとの関わりの中で、自分の業務が適切な範囲になっているかを意識する必要がある
みなさんの会社のPM業務についても知りたいです
今回、PMの業務を整理するために作成した業務マップのテンプレートを作成して公開しました。 このテンプレートを使って各社でPMの業務マップを作成することで、きっと採用活動で役立てられたり、社内のプロダクトマネジメントへの理解が深まると思います。そしてもし可能であればぜひそれを公開してもらえると私がとても喜びます。プロダクトの開発業務について、 みなさんの会社でどのようになっているか、とても興味があります。
URL: https://www.figma.com/community/file/1215220601268847995/
スマートバンクではプロダクトマネージャーを大募集中です
業務マップを元にスマートバンクでPMがどのような業務に関わっているかを説明してきました。この記事を読んでスマートバンクのプロダクトマネジメントに興味をもっていただけた方、ぜひ私とカジュアル面談しませんか?
スマートバンクではPMを大募集中です。カジュアル面談ではB/43についてのお話やプロダクトマネジメントについてのディスカッションをさせてください。また本エントリーについて質問などももちろん歓迎です!