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B/43を運営する株式会社スマートバンクのメンバーによるブログです

打ち手検討の勘所: プロの思考を観察し、素人の反応を尊重しよう

この記事は SmartBank Advent Calendar 2024 の7日目の記事です。 昨日はサーバーサイドエンジニア mokuo さんの「非同期処理においてデータの整合性を保つアーキテクチャパターン」という記事でした。

📝 “プロ” との対比で分かりやすさのため “素人” という言葉を使っていますが、あくまであるドメインのタスク遂行においてのという意味合いで、他意はありません。

こんにちは!

スマートバンクでプロダクトマネージャーをしているじょー(@jouykw)です。

みなさん、新機能の打ち手の具体検討 ってどのように進めていますか?

プロダクトの作り手であれば、ユーザーの課題を定義し、それに対して提供価値や、打ち手を検討する教科書的な流れ自体は心得ていると思いますが、特に新規性が高いような新機能やプロダクトを作ろうとする中で、ユーザー課題は確かに存在しており根深いんだけど、

  • どうも打ち手が芯を喰ったものにならないんだよな、、、
  • 課題の裏返しのようなシンプルで抽象的な打ち手アイデアは出てくるけど、深みや驚きがある具体の体験にまで昇華できていない感じがするんだよな、、、
  • ユーザーが見た時にオッと前のめりになるリアクションがないんだよな、、、

こんな悩みを抱えたことはないでしょうか?

本ブログでは、上記のような状況を脱するために、私自身が試行錯誤しながら行った「打ち手検討」のプロセスについての具体的な学びをご紹介します!

参考)前段の課題・価値定義のプロセスについては、下記ブログで詳細を書いたのでこちらも是非! blog.smartbank.co.jp

🤔提供価値からいきなり打ち手を具体化するのは難しい?

ユーザーリサーチを行い、うまく解くべきユーザーの課題や提供価値を定義できたとしても、そこから打ち手を検討するのにジャンプを感じたことはありませんか?

具体例をもとに見ていきましょう。

たとえば、家計管理がうまくできていないユーザーの下記のような課題を発見したとします。

月中いつもよりお金を使いすぎていることに気付けず、クレカの支払い予定が届いたタイミングで使いすぎていたことに気づき後の祭りになってしまっている

この課題を解くために、下記のような提供価値の方向性を考えたとしましょう。

「月中に使いすぎる前に、早期に使いすぎ傾向に気付いて支出を管理できるようにする」

さあここから早速仕様を詰めて開発しようぜ!となるでしょうか?

これだけだとまだ打ち手の方向性がたくさんあり、ユーザーストーリーや仕様を策定する上で不明点がたくさんあると感じるのではないでしょうか? 価値の粒度が粗いため、ありきたりな打ち手に落ち着いてしまったり、ターゲットユーザーに刺さらない打ち手になってしまう可能性が高いでしょう。

では、提供価値から適切でグッとくる具体の打ち手を検討するには、どうするといいのでしょうか?

👀 プロの思考を観察し体験の要件を抽出する

スマートバンクPMが運営する「プロダクトディスカバリー」をテーマにお話しする Podcast 番組『プロダクトディスカバリーチャンネル』にて、他社のディスカバリー事例についてインタビューする中で、そのヒントは見つかりました。

複数のプロダクトチームにおいて、「ドメインエキスパート」の方々を巻き込み、彼らが行ってる業務プロセスを詳しくお伺いしたり、プロセス内での各タスクについてどのような思考プロセスでそれを行なっているか?のロジックを事細かに明らかにしていく検討の進め方をお伺いする中で、これが家計管理のドメインにおいても活かせるのではないか?と考えました。

open.spotify.com

家計管理・改善のプロとも言えるような方々(FP、家計管理本の著者、節約アドバイザーの方々 etc…)にエキスパートインタビューをさせていただき、提供価値に紐づく業務プロセス・作業として、彼らが実践されている行動や、その背景にある思考フローを深掘りさせていただき、複数人から繰り返し語られる要点について抽象化する 作業を行なっていきました。

プロの行動・思考のエッセンスを抽象化し整理する

コツは、可能な限り「トップ1%」のプロに話を聞くこと、またそのような行動様式になっている背景にある思考フロー・ロジックを理解することです。

こちらは Algomatic 社PMのほかりさん(@k_hokari_biz)との Podcast インタビューをぜひ聞いていただきたいのですが、これからのプロダクトづくりはアクションフローを理解することに加えて、非常にうまくそのアクション・業務を行う人の思考フローまでを事細かに理解することで、彼らと同じような業務の進め方やアウトカムを誰でも再現できるようになるのではいう仮説を述べており、この考え方を参考にしています。

open.spotify.com

その道のプロやトップ1%の方々は、ある行動1つとっても、その背景に過去の失敗経験をもとにその行動や思考をするようになっていたり、再現性のあるロジックを持っていらっしゃったりすることが多いです。思考フローを深く理解し、エッセンスを抽出して体験上の要件に落とすことで、仕様案がグッと工夫に満ちたものに仕上がるはずです。

ただし、それをそのまま模倣するのは良いのか?は作り手の方で一段吟味する必要があります。業界の慣習としてはこのような行動・思考フローになっているが、それは従来の前提条件を踏まえるとそれが最も良いとされているもので、従来の制約を外すともっとベストな要件を考え出せる可能性は大いにあるので、あくまで1つのヒントとして活用すると良いでしょう。

このようにプロの行動・思考フローから煮詰めて抽象化した、体験上満たしたい要件を整理してあげることで、提供価値・打ち手の像がよりはっきりしてくるのではないでしょうか?

📝打ち手の要件を整理するための手段やコツはケースバイケースです。 これがワークするケースとしては、家計管理領域のようにユーザーの課題解決の代替手段としてプロがサービスを提供しており、それに対して高い対価を支払っている場合にオススメです。 他の手段やコツの例としては、ユーザーの代替行動や同じ構造の課題を解く別ドメインのサービスの体験を参考に、要件を抽出したりしています。

余談:カーネギーメロン大学教授でロボット工学の権威である金出氏の「素人発想、玄人実行」にも近い感覚かもしれません 💭

「素人発想玄人実行」とは,金出先生の著書 によると,「発想は単純,素直,自由,簡単でなければならない.しかし,発想を実行に移すには知識がいる,熟練された技がいる」ということである.

🤨 素人の反応を尊重しwow な体験かを検証する

提供価値を構成する体験上の要件が整理できてきたら、並行して具体の体験案をプロトタイピングしていきます。

全く新しい新機能であれば、できる限り仕様を作り込む前に主要な体験箇所だけでもターゲットユーザーに向けプロトタイプを用いてソリューションのテストすることを強くお勧めしたいです。

というのも、体験上の要件を実現する具体の形の中にもバリエーションがいくつか考えられ、思った以上にターゲットユーザーの方の最初の反応・素直な感想から学べることは多いからです。

たとえば家計管理の例では、「月中想定外に使いすぎる前に、早期に使いすぎ傾向に気付いて支出を管理できるようにする」という提供価値を実現するために、体験上満たしたい要件として

  • 管理すべき対象とそうでない対象とを分けて考えてあげる
  • 週次のサイクルで使っていい金額を振り分けてあげる
  • お金の利用を制限するのではなく、使ってもいい金額を明示してあげる

これらを満たすようなプロトタイプを作って、ターゲットユーザーの方の反応を見てみることにしました。

ところが、テキストベースで伝えるとうまく刺さっているかに見えた提供価値や体験上の要件が、具体のプロトタイプ案に落としてみると難しすぎて理解できない ことがわかってきました。

プロが使う概念で整理した要件やUIデザインは、いわゆる家計管理の素人の方々にとっては馴染みがない、複雑すぎる仕様になってしまっていたのです。

難しすぎた初期プロトタイプ

この場合、どのようにフィードバックを解釈してどう取り入れるかという論点はあれど、ターゲットユーザーの反応自体はプロジェクトの成否を決める上でクリティカルな情報であることが多いです。特に初見で良い反応が得られない機能、理解ができない機能は、ユーザーが初期接点で使う欲求そのものが湧かないので、経験上失敗してしまうことが多いです。

社内のプロジェクト外のメンバーなどでも大丈夫ですので、具体のプロトタイプができてきたら、一度見せてみて最初の率直な反応について念入りにに観察し、何がそのような反応を引き起こしているかを紐解き、プロトタイプや元になっている体験上の要件をブラッシュアップしていくと良いでしょう。

シンプルに洗練された現在の仕様

参考)ユーザーの反応を正しく捉えるためのインタビューの Tips については PM inagaki-san が書かれた下記ブログもぜひご覧ください

blog.smartbank.co.jp

🚨素人の意見、プロの反応にはご注意!

このように、プロや素人に話を聞くのは打ち手検討をする上で非常に有用ですが、1つだけ注意点があります。それは狙いごとに聞く相手を誤ると、逆効果になってしまうリスクがあることです。

⚠️ 「素人の意見」を鵜呑みにする
  • あくまでドメインのエキスパートではないので、繰り返しのPDCAを経て練り上げられているわけではない素朴な打ち手のアイデアは、ソリューションへの示唆としては的外れなことがあります
  • そもそも素人は打ち手の専門家ではないので、欲しいものを言語化できないケースが多いです
  • 他方でめちゃくちゃ自分で打ち手を考え抜いているエクストリームユーザー、アマプロみたいな人であれば大いに学ぶ意味があります
⚠️ 「プロの反応」を見る
  • 前提知識が豊富で、打ち手の解像度が高いからこそ、ディティールに目がいってしまい、本質的な価値や体験に対するリアルなフィードバックが得にくいと感じています
  • 基本的には複雑さを生む方向のアドバイスが多くなり、そもそも論や本質的な価値への示唆が得られにくいです

もちろん、それぞれの意見が参考になることも多々あるので、必ずしも一概には言えませんが、気をつけながら、適切に打ち手検討のプロセス内に意見を取り入れていけると良いでしょう。

余談:社内でブログの下書きを共有したら、プロ奢ラレヤーの方が似た名言を残していることを教えてもらいました。深いですね、、、! togetter.com

📝 まとめ

課題・提供価値から打ち手案を具現化していくプロセスにおいては、

  • プロへのエキスパートインタビューを通じ、トップ1%の思考フローから提供価値を満たすための体験上の要件のヒントを得て 体験で満たしたい価値の要件を抽出するのがおすすめです
  • 素人であるターゲットユーザーへのソリューションテストを通じて、ファーストインプレッションや利用ハードル、使い勝手についての反応を観察し、価値の要件を満たすプロトタイプを元に仕様を磨くのがおすすめです

話を聞くべき人を間違えると、いいフィードバックが得られないリスクがあるので注意

  • 素人から打ち手やソリューションのヒントを得ようとインタビューを重ねてもあまり学びがないかもしれません
  • プロにソリューションテストをして反応を聞いても、実際にターゲットに刺さる体験や仕様に仕上がっているかは別物かもしれません

おわりに

いかがだったでしょうか?

プロの思考を観察し、素人の反応を尊重」しながら進めることで、筋がいい具体的な打ち手検討の参考になれば幸いです!

(是非みなさんの打ち手検討の工夫も教えてください!)

明日の SmartBank Advent Calendar 2024 はアプリエンジニアの nakamuuu さんの記事です!お楽しみに!

P.S. その1 スマートバンクはシリーズB大型資金調達を行い、全職種採用強化中です! Fintech × AI の力で全く新しい家計管理サービスを作り、お金の悩みや不安がない世界を一緒に作っていきませんか? smartbank.co.jp

P.S. その2 資金調達記念で各種イベントを実施します!

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P.S. その3 pmconf 2024 で登壇します!

筆者の私じょー(@jouykw)は、昨年に引き続き公募セッションに採択いただき、2年連続で pmconf2024 に登壇させて頂くこととなりました!スマートバンクからはもう一名、inagaki さんも登壇予定なので、なんと2年連続で2名のPMが公募セッションにて登壇させていただく快挙となります!

今年は「よいPM定例はPM組織を強くする ~プロダクトチームを相互に強化し合う場づくり~」という渋めのテーマで発表予定ですので、もしよければご笑覧ください! 2024.pmconf.jp

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In this blog, engineers, product managers, designers, business development, legal, CS, and other members will share their insights.