こんにちは!SmartBankでUXリサーチャーをしているHarokaです。 今回は、弊社で新入社員の入社時に行っている「リサーチオンボーディング」についてご紹介します。
私自身、SmartBankのバリュー「Think N1」を体現する職種としてバリューワークショップの運営に携わっています(参考:バリューを浸透させる新入社員向けワークショップとは - inSmartBank)が、リサーチチームとしても、リサーチに関するオンボーディングを実施しています。
現在、SmartBankではあらゆる職種がリサーチャーと接点を持ち、自分たちの業務にユーザー視点を取り入れながら業務を進めています。
広告文一つにしても、銀行など外部の会社様との打ち合わせの際にも、「B/43 を使ってくれているユーザーはこんな人です」「ペアカードはこの課題を解決しているんです」が各社員が自分の言葉で語れるよう、リサーチャーとして働きかけるため、日々工夫しています。
その取り組みの一つが、リサーチオンボーディングです。
リサーチオンボーディングとは
リサーチオンボーディングは、入社月とその翌月の2回に分けて行っています。 入社月の狙いは「SmartBankのリサーチ文化について理解し、共感してもらうこと」「リサーチそのものを体験してもらい、ユーザー理解、プロダクト理解を進めること」。
二ヶ月目の狙いは、「リサーチ体験を通じて、自分の職種との接点や使いどころを感じてもらうこと」「リサーチャーの動きを理解してもらうこと」になります。
入社月:SmartBankのリサーチを知り、共感する
入社日当日のオリエンテーションはファウンダー陣が大事にしてきたリサーチ文化や、事業推進のためにリサーチを用いる目的を前段で紹介します。
リサーチを自ら経験したことがあったとしても、ほぼ全ての新入社員の方は「リサーチャーと同じチームで働いた経験がない」ため、SmartBankにおけるリサーチャーの振る舞いについて紹介しています。
組織によってリサーチャーが担う役割も違うため、前職の様子などをヒアリングしながら、新入社員が業務ベースでイメージしやすいように対話形式で進めます。
なお、弊社では社員のみならず、CS(カスタマーサポート)のアルバイトスタッフさんに向けても実施しています。
この場合、日々ユーザーからくる要望共有や、インタビュー打診など、チーム間の連携をスムーズに進めるため、少しアレンジした内容にしています。
CSでは、ユーザーの顕在化した課題を扱うことが多い一方で、リサーチャーはユーザー自身がまだ気づいていない課題を明らかにすることが多く、同じユーザー理解でも守備範囲が異なることをお伝えしています。
リサーチを資産と捉える姿勢を共有
リサーチのことをやりとりできるSlackチャンネルや、データベースのありか、使い方についてお伝えすると共に、どういった設計思想でデータベースを作ったかも合わせて紹介しています。
過去のリサーチは資産であり、それらが活用できる状態であるようリサーチャーで一元管理・保守運用していること、各職種にユーザーについてわからないことがあれば、まず話しかけてほしいことなど。
インタビューのデータベースについては以下のブログで詳細を書いているのでよろしければお読みください。
インタビューを「受ける」側になってもらう
入社月のオンボーディングの中でユニークなのは、インタビュー体験でしょうか。
60分の時間をとり、実際に私が新入社員にインタビューします。普段の支出把握や家計管理について、など。場合によっては、その時に動いているプロジェクトのインタビューの社内対象者として協力してもらうこともあります。書記は、メンバーの一つ前に入った人に担当してもらいます。
インタビューを受ける側になることで、「ユーザーは無意識のうちに嘘をつく」だったり「モデレーターのちょっとした表情を気にかけて発話する」など、ユーザー側から見た景色を体感してもらいます。
インタビュー参加を通じて、事業理解とユーザー理解を促進させる
他、当月に動いているインタビュー全てに任意招待し、できる限り参加できるようにしてもらいます。月によっては10数件動かす時もありますが、皆、積極的に参加してくれます。
インタビューに複数回参加することで、サービス理解が進んでいきます。また、今事業として何に注目し、何を明らかにしていきたいかも自然と意識できるようになります。
弊社の社員は自分自身がペアカード、マイカードのユーザーであることが大半なので、「自分とは異なる使い方だ」とか「こんな使い方をしているのか」といった気づきから理解を深めてもらいます。
二ヶ月目:自分の職種とユーザー視点の交わるところを見つけ、実務に活かす
インタビュー後には、該当のリサーチプロジェクトに携わるメンバーでラップアップ(インタビュー全体の振り返り)をするのですが、お聞きした内容がリサーチ上の仮説とどう対照していそうか、検証ポイントに関する気づきを確認します。この流れを通じて、”リサーチャーがリサーチプロジェクトを動かす”ところを体感してもらいます。
これらのインタビュー参加を踏まえて、二ヶ月目の研修では、リサーチオンボーディングを受けてみての気づき・学びやリサーチャーという職種理解が進んだかなど、私から質問して一緒に思考を整理する時間をとっています。
実務もある程度進んできますので、より具体的にイメージしやすくなるこのタイミングで、自分の職種に役立ちそうなポイントを見つけてもらいます。
プロダクト開発に関わるメンバーだけではなく、例えば経理、広報といった職種でも「ユーザー視点」を取り入れながら業務を進められそうだ、という感覚を持ってもらうのがゴールです。
実際に、複数名の新入社員に聞いてみたところ、以下のようなコメントがありました!
オンボーディングを通じて、「このリサーチはどう活かされるのか」に意識が向いていく
オンボーディングは、2022年5月に開始し、今に至りますが、参加した社員と一緒に振り返ることで、運営改善につなげてきました。
中でも大きな気づきは、複数名から「インタビューで得た情報には、さまざまなものがあったが、その中でも何をリサーチ結果として取り扱っているのか」「インタビューが終わった後、どのようなことをリサーチャーはしているのか」という質問を受けたことです。
確かに、インタビューの場だけに同席していても、全体像が掴みづらく、後工程ははっきりとわかりません。社員の気づきから、リサーチの情報が体系化され、リサーチプロジェクトの流れが掴みやすくなるドキュメントの必要性を感じました。
何か共有できる方法はないか、と考えて2つ取り組んでみることにしました。
課題定義のリサーチにおけるステップを非リサーチャーでもわかるように言語化したこと
インタビュー結果をプロジェクトチームに展開するタイミングで、新入社員も任意招待したこと
上記の対応として、これまで自分が実施してきたリサーチや使用しているツールなどを整理し、オンボーディングの内容も振り返りやすいよう、「Research Culture Book」として再構成しました。 データベースやブログが点在しているため、それらを俯瞰できるものを用意しています。
こちらの図については、ユーザーリサーチの勘所: 行動パターンを見つけてユーザーの課題に共感しよう - inSmartBankでも詳しく取り上げられています。
二ヶ月目の振り返りの際にも、「リサーチャーがどんな役割で組織に関わり、何を期待されているか」を改めて伝えることで、リサーチ活動に興味を持ち、協力してもらえる体制を作れるようにしています。
このResearch Culture Bookは、社内向けに書かれた資料ですが、SmartBankのリサーチについてまとまっているものなので、近いうちに社外展開もできたら、と考えています。
「こんなシーンできっとお役に立てます」を感じてもらいたい
インタビュー結果のお伝えの場に招待する場合、新入社員によっては自分がアサインされていないプロジェクトに顔を出すことにもなります。でも、それは必要なことだと皆が認識しているのが、SmartBankらしさであるように感じます。
リサーチは、工数が一定かかります。実務担当でない場合、ある意味「自分には関係のない、優先度の低い業務」として捉えられても仕方ないのかなと私は考えます。
それでも、リサーチ活動に興味を持ち、関わってもらうことが、結果的にその職種の業務をやりやすくしたり、良質なインプットにつながるケースが多いと信じています。
ユーザーに対する認識を揃えることによって、チームとして足並みを揃えたり、納得感を持って業務にあたれるようになると思っています。
また、「こういうところできっとお役に立てます」とリサーチャーから働きかけることが、新入社員の会社理解、そして組織への定着を推し進めることにつながるのではないかと考えます。
SmartBankにご縁があり、入社された際にはぜひリサーチのエッセンスを感じていただきながら、共に進めていけるよう、サポートしたいと思います!
リサーチに興味があるどの職種の方でも、いつでも情報交換お待ちしています!