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スマートバンク流 新規事業開発の虎の巻 🐯📜 < 事業機会を見つけるためのフレームワーク編 >

こんにちは!スマートバンクでビジネス本部の責任者をしている赤池(@chihaya_akaike)です。この記事はSmartBank Advent Calendar 2024の23日目の記事です。昨日はkanekoさんのシリーズBの資金調達後、現在のモバイルアプリ部を紹介します でした。

今日はBizDev dayと題して、スマートバンクに所属する事業開発担当3名それぞれが記事を書いております。他2名の記事もぜひご覧ください!

takeshiさん:toCサービスにおけるBizDevのミッションを再定義してみた

ushiroさん:急成長SaaSスタートアップを退職し起業したら、いつの間にかスマートバンクにいた件

スマートバンクには、新規事業の「ゼロイチ」の探索をミッションとした「マーケットディスカバリーチーム」があります。少数精鋭で、職種に囚われず、必要であればUXリサーチャーが営業をしたりもします…!

これまでのチームとしての取り組みを振り返って、今回はマーケットディスカバリーチームで活用をしている「事業機会を見つけるためのフレームワーク」にフォーカスをしてまとめてみようと思います。

事業開発は思うように進まないことがほとんどです笑 その中で思いもよらない発見や失敗をしながら前に進めるのが、事業開発の面白いところでもあり、難しいところでもあると思います。

不確実性が高いからこそ、軸となるフレームワークの活用や抑えるべきポイントを把握していることが大事だと思っています。試行錯誤をしながら前に進むための工夫や取り組みを紹介しているので、読んでくださった皆さんにとって、少しでも参考になれば嬉しいです!

マーケットディスカバリーチームとは?

まずは簡単にスマートバンクのマーケットディスカバリーチームについて紹介します。体制はこれまで何度か変わっているのですが、現時点ではCEO・Bizdev・リサーチャーで構成されており、新規事業機会の「タネ」を探すことを目的としています。スマートバンクでは、新規事業開発は以下の図のように4つのフェーズに分けて考えています:

新規事業開発の4つのステップ

Where (市場はどこにあるのか)

  • 最初のフェーズでは、対象とする市場(”Where”)を選定します。事業課題に対してアイデアのブレストなどをして可能性を広げた上で、想定され得るインパクト・実現可能性などの観点から優先順位付けを行い、フォーカスする事業領域を設定します

What (新規事業の仮説は)

  • 次のフェーズでは事業仮設(”What”)の立案を目的としています。ユーザーインタビューや有識者へのヒアリングなどを通じて事業領域を深く調査し、事業領域の解像度を上げます。その上で、得られた情報を元に事業要件を整理して、事業の方向性を定義します。もちろんこの際に、これ以上深掘りをしないという選択肢を取ることもあります

How (顧客課題は解決できるのか / マネタイズは成立するのか)

  • 3つ目のフェーズでは、ミニマムで事業仮説の検証をします。新たに事業を立ち上げるということは顧客課題の解決とマネタイズの両方を実現する必要があるため、実際に簡易的なプロダクトに落とし込んだり、ソリューションを顧客に当てて検証を行います

Deliver (どうやってスケールさせるのか)

  • 最後に、検証を通じて「これはいけそうだ!」となったら、正式にチーム組成し、事業を立ち上げ、スケールをさせていきます

各フェーズで「広げる」と「絞る」を繰り返すことで、段階的に事業機会を見極めていきます。

TAM (市場規模) はどのくらいありますか?

B/43のTAM (Total Addressable Market) はどのくらいありますか?」と質問をされることがあるのですが、いつも回答に困っています笑

もちろん既に存在する市場でマーケットシェアを奪うという観点も大事ですが、スタートアップにとって市場は生み出すものであり、どのように事業を拡張し、市場を広げられるかが重要だと考えています。

例えば、立ち上げ初期のフリルやメルカリであれば当時のヤフオクや楽天オークションなどの2次流通市場をもとに市場規模を算出することもできますが、実態としてはオンラインで中古品を売買していなかったユーザー、そしてそもそも中古品を売買していなかったユーザーを取り込み、新しい市場を生み出しました。

加えて、メルカリを起点にメルペイなどの新しい事業を立ち上げ、新たな市場を作ることを繰り返した結果、当初は算出できなかったであろう規模にまで成長をしています。

よって、スタートアップとしては、マーケットディスカバリーを通じて新しい事業機会を創り出し、非連続な成長を継続的に実現することが宿命であると強く感じています。

事業機会を見つけるためのフレームワーク

ここからは、上記の新規事業開発のステップ図で説明をした「Whereの選定」をするにあたって、スマートバンクで行なっている取り組みを紹介したいと思います。スマートバンクでは、これまで培ってきたアセット(顧客・技術・ノウハウなど)を起点に、どのように事業を発展させられるのかにフォーカスをして探索活動を直近行ってきました。

その上で、マーケットディスカバリーチームでは

  1. 自分たちが培ったアセットや強みを他の市場に持ち込み、新しい事業機会を生み出すことができるのか
  2. 顧客のバリューチェーンにおいて不足している部分・切り出せる部分はあるか

という主に2つの視点を用いて、新たな事業機会がどこにあるのかを探索してきました。

イメージを持っていただくために、スマートバンクの事業「B/43」について簡単に説明をするとVisaのプリペイドカード家計簿アプリがセットになったサービスを提供しています。また、特徴としては3つの顧客セグメントをターゲットにしてラインナップを展開しています。1人で利用できるマイカードに加えて、誰かと一緒に家計管理をするというニーズに着目し、パートナー・親子で一緒にお金のマネジメントができるペアカード・ジュニアカードも提供しています。

自分たちのアセットや強みと向き合う

1点目の「自分たちが培ったアセットや強みを他の市場に持ち込み、新しい事業機会を生み出すことができるのか」においては、「定性」・「定量」の2つのアプローチを活用してアイディエーションを行うことを大事にしています。

定性的なアプローチについては、自分たちの会社・事業のアセットと強みのリストアップから始めます。考え方は事業の性質などによって異なる部分もありますが、ステップとしては:

  1. システム・プロダクト・データ・組織・ノウハウなどのカテゴリに分けてアセット・強みのブレストする
  2. 他社との優位性・独自性・取得難易度などの観点でスコアをつける
  3. 特定のアセット、もしくは複数のアセットを組み合わせることで、参入できる市場や解決できる課題についてのブレスト

ここでの目的は新しい市場を切り拓く起点になり得るアセットや強みを見極めることです。なので、#2のステップではリストアップされたものと複数の観点から向き合い、自分たちは「これだったら他者に絶対負けない!」と自信を持てる本質的な強みを深く追求することが重要です。

そして#3のステップでは、強みの組み合わせについて考え、自社ならではの課題解決のアプローチ(= 事業機会) を考えることを重視しています。

例えば、スマートバンクが提供するジュニアカードについては、共有口座機能(プロダクト) x 決済・カード発行基盤(技術) x 資金移動業のライセンス (免許)といった形で自社で培ったアセットを組み合わせて隣接市場で事業を立ち上げたわかりやすい事例だと思います。

定量的なアプローチについては、自社サービスのデータ分析から始めます。新しい事業機会を見つけるために重要視しているのは、ただ単にデータを分析するのではく、「”想定をしていない使い方”をしているユーザーはいないか?」「”不合理な使い方”をしているユーザーはいないか?」という観点で、データを深掘りして”異常値”を発掘します。

そのためにはマクロのトレンドや傾向ではなくて、N1のユーザーの使い方を分析することが重要です。例えばB/43であれば1人あたりの決済金額・決済件数・出金回数などのデータを分析した結果、下記のようなとても興味深い使い方をしている”異常値”を発見しました。

  • 特定の加盟店で短期間で数百万円から数千万円の決済を繰り返しているユーザー
  • 毎年同じタイミングで、同じ加盟店のみで決済しかしないユーザー
  • 決済機能の利用は一切していないが、毎月数十回出金をしているユーザー

決済・入金・出金などに分けてN1でユーザーの利用動向を調査

メインのユースケースからはズレて、不便な形でも利用していただいているということは、それだけ解決をしたいバーニングニーズがあり、且つそのニーズを満たすサービスを見つけられていない可能性が高いと考えられます。なぜそのような使い方をしているのか・どのような課題を解決しようとしているのかをユーザーインタビューなどを通じて調査することで、新しい事業機会が見えてきます。

私たちが提供しているペアカードも同じような発見に基づいています。”1人用”として提供をしていたマイカードを、カップルやご夫婦の方がどうにか2人の家計を一緒に管理するために利用できないかと試行錯誤しているのを発見し、”2人で一緒に共同で家計管理ができる口座”の事業機会を発見することができました。

定性と定量のアプローチに共通する点としては、N1の単位で深く自社の強み・顧客と向き合い、新しい市場を生み出す起点を発見することだと感じています。

バリューチェーンを起点に事業機会のタネを見つける

2点目の「顧客のバリューチェーンにおいて不足している部分・切り出せる部分はあるか」については、バリューチェーンを活用して新しい事業機会を発見します。具体的には、顧客のペルソナ毎にバリューチェーンを書き出し、

  1. まだ十分に価値・機能提供できていない不十分な地点を見つける
  2. 提供をできている価値・機能において、単体で切り出せる機能を見つける

というアプローチで事業の拡張について考えています。

バリューチェーンを書き出し不足地点・切り出せる部分を可視化

1点目の価値・機能提供が不十分な部分については、それを満たすことでユーザーが求めるものを提供できる可能性があるため1つの事業タネとして考えられます。

また、2点目については既にバリューチェーンにおいて成立をしている機能であるため、自社のサービスの外で単体でも成立する可能性があります。よって、単体で切り出して直接ユーザにサービス提供、もしくはそのパーツが不足しているバリューチェーンを持っている企業などに提供するといった形で自社の事業の可能性を広げることができます。

最後に

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!冒頭でも書いた通り事業開発は思いもよらないことの繰り返しです。不確実性が高い取り組みだからこそ、今回ご紹介したようなフレームワークなどを活用してアプローチすることも時には大事だと思っており、少しでも参考になっていたら嬉しいです!

スマートバンクのマーケットディスカバリーチームについて、もっと詳しく知りたい方やご質問などあれば、お気軽にご連絡ください!

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