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B/43を運営する株式会社スマートバンクのメンバーによるブログです

【第2回】パフォーマンスチューニング会開催レポート

こんにちは!サーバーサイドエンジニアの mitani です。

以前公開した【第1回】パフォーマンスチューニング会開催レポート に続き、第2回を実施したのでレポートを書きたいと思います。

第2回のお題

第1回に引き続き、隔週で行っているパフォーマンスMTGで見つかったIssueを選びました。

パフォーマンスMTGでは以下のようにRDSのPerformance Insightsという機能を使い、RDSのCPUをモニタリングして負荷が高いものをIssue化しています。今回はそのIssueのうち、00:30頃から02:00頃まで負荷が高かったクエリの改善をお題として選びました。

Performance Insightsで発覚した負荷の高いクエリ
Performance Insightsで発覚した負荷の高いクエリ

B/43では口座残高を日々集計し、資金移動業者として履行保証金として保全する金額を計算しています。履行保証金とは、仮にスマートバンクが破産した際でもユーザーに対して優先的に弁済を行う原資となるものです。今回のお題となったクエリは、この履行保証金を計算するシステムの一部分で実行されていました。このクエリはユーザーの口座残高を集計するため、サービスの成長とともにレコード数が増え、徐々に問題が顕在化してきたものでした。

レギュレーション

  • 2人1組でチームを組み、制限時間は1時間30分
  • 終了後、各チームの改善案を発表し、最も良いものをPRとして出す

イベントの様子

今回のお題はバッチシステムから発行される一部のクエリだったため、Performance Insightsに表示されているクエリが実行されているコード箇所を特定して、そのバッチの仕様を把握するところから始まりました。

第1回の反省点として、パフォーマンスチューニングに使う本番のコピーDBの準備に時間がかかっていたため、今回は前日に準備しておくことでスムーズに作業に着手できました。

今回のバッチはリリース当初から存在するもので、バッチの仕様だったり集計対象のテーブルに普段触れていないメンバーも多かったです。そのため、チーム横断して質問しあいながら仕様を把握し、改善案については各チーム内で考えるという形で進めました。

ボトルネックとなっていた箇所

調査を進める中で、以下のようなコードがボトルネックになっていることが判明しました。(実際のコードをぼかして書いています)

# Point 1
records = TableA.where(
    foreign_table_id: user.table_a
    .joins(:foreign_table)
    .where(id: ...id)
    .group(:user)
    .select('MAX(foreign_tables.id)')
)

# Point 2
return if records.empty?

other_table.update!(amount: records.sum(&:amount))

Point 1

サブクエリでuserごとのidの最大値を取得し、foreign_table_idで絞り込みをしているクエリです。TableAのforeign_table_idは外部キーだったためindexは作成されているのですが、実行計画を見るとtype=ALLとなっており全件走査が起きていました。ここがCPU負荷を高めている要因だと思われます。

実行計画(実際のものから重要な箇所のみピックアップ)

id select_type table type rows filtered Extra
1 PRIMARY table_a ALL 289879 100 Using where
2 SUBQUERY foreign_tables ref 1 100 Using index; Using temporary
2 SUBQUERY table_a eq_ref 1 100 Using index

Point 2

ここの empty? はActiveRecordに生えているものなので、SELECT 1 AS one FROM … というクエリが発行されます。ただやりたいことはrecordsが1件以上あるかどうかのチェックなため、クエリを発行しなくても判定できるものでした。

結果発表

第1回とは違って、全てのチームで同じ解決策に至ったため同率優勝となりました 👏

どのチームもtable_aにindexが効かずに全件走査されている点を問題視し、indexが効くようにクエリを変えるアプローチを取りました。具体的には、以下のようにIN句の中で集計関数を使うとindexが使われず、

SELECT *
FROM table_a
WHERE foreign_table_id IN (
  SELECT MAX(id)
    FROM table_a
   INNER JOIN foreign_tables ON table_a.foreign_table_id = foreign_tables.id
   WHERE id > xxx
   GROUP BY user_id
)

以下のようにIDを直に指定するとindexが使われるため、IN句に指定するIDを取得する処理とその後の処理を分けるように修正しました。

SELECT *
FROM table_a
WHERE foreign_table_id IN (1,2,3)

なお、同じようにサブクエリにしたままでも集約関数を使わなければindexを効かせることができます。これにはMySQLのクエリーオプティマイザによるセミジョイン最適化の仕組みが働いているようです。

https://dev.mysql.com/doc/refman/8.0/ja/semijoins.html

修正コードイメージ

ids = user.table_a
        .joins(:foreign_table)
        .where(id: ...id)
        .group(:user)
        .pluck('MAX(foreign_tables.id)')

return if ids.empty?

records = TableA.where(foreign_table_id: ids)
other_table.update!(amount: records.sum(&:amount))

上記のように変更することで、Point1のindexが効かない問題が解決され、Point2のクエリが2回実行される問題もidsを取得する際にpluckでArrayが返却されることで解消することができました。

それにより全件走査が行われることによるCPU負荷の軽減と、1件あたりのクエリの速度が上がることによる全体の速度改善が期待できます。どの程度改善したかは、リリース後に追って追記しようと思います。

まとめ

第1回と同様に、参加したメンバーからは同じ課題に複数人のチームで取り組むことでのナレッジシェアだったり、コンテストっぽく取り組めることで楽しくパフォーマンスチューニングを行える良さが好評でした。

また、前回と違い時間を半分の2時間にしたため、クイックに原因究明 ~ 修正PRの提案まで行けたこともスピード感ある取り組みとして好評でした。

レポートは以上となります。今後もパフォーマンスチューニング会を継続的に実施していく予定なので、その時のTips等をブログで公開していきたいと思います。

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