
前置き
株式会社スマートバンクが運営しているB/43事業は2021年のサービス開始から順調に成長し、月間の決済取扱高も数十億円規模を超えております。また、会社としても2024年の末に40.8億円という大きな額の資金調達も行ってきました。
しかし、「お金の悩みを解消し、よりよい人生を送れる未来を創る」というビジョンから逆算すると、ユーザーにとって価値を広げていく領域がまだまだあり、伸び代が大きいと考えています。
特に資産管理や中長期的な融資を含めた家計のサポート、そして非接触決済への対応は非常に重要であり、何としても今年中に機能として形にしようと考えています。このエントリーでは株式会社スマートバンクだからこそできる、ユーザー中心の金融サービスを継続的に生み出していくために、CTOの @yutadayo がエンジニアと共に達成したい目標について技術的な視点から紹介していきます!
1. 資産管理プラットフォームとしての進化 2. 個人に最適化された家計管理体験の提供 3. 決済体験の向上 4. 資金サポート手段の拡大 5. オンボーディング体験の向上 6. 不正対策 7. データ分析基盤 8. モバイルアプリ 9. CRE(Customer Reliability Engineering) 10. SRE(Site Reliability Engineering)
1. 資産管理プラットフォームとしての進化
B/43はこれまで、家計管理やパートナー間での支出の可視化を支援してきました。そして昨年末、銀行口座との連携機能など資産把握できる機能を導入し、生活費管理から資産管理へとサービス価値を広げました。この進化により、ユーザーがより積極的に自身の資産を管理できる環境が整いつつあります。
提供したい価値
B/43が目指しているのは、支出管理や資産把握の先にユーザーが「お金を貯める・増やす」という行動を自然に起こせるような仕組みを提供することです。ユーザーが自分の資産状況をもっと深く理解し、資産を形成するサポートをしたいと考えています。そこに向けて、さらに多くの金融機関との連携や、資産管理の精度向上を進めていきます。
実現のためのチャレンジ
まだ対応できていない複数の金融機関とのデータ連携を追加し、自分の資産を簡単に把握できるようにしていきます。連携金融機関が増えるとパフォーマンスが悪化するため、並列化や最適化によって効率的にデータを収集する仕組みやスケーラビリティを高めていく点に技術的チャレンジがあると思っています。
2. 個人に最適化された家計管理体験の提供
世界中でFintechサービスが進化する中、B/43も個々のユーザーに合わせた家計管理体験を提供すべく、レシート読み取りなどにAI技術を活用した機能開発を行っています。今年末には、個人の購買データや資産情報をもとに、よりパーソナライズされた家計改善や資産形成のアドバイスを行うアシスタント機能をリリースしたいと考えています。
提供したい価値
B/43が目指しているのは、単に家計を把握するだけでなく、ユーザーが自分の生活や価値観に基づいて最適な予算設定や支出管理ができるようサポートすることです。そこに向けて、AIを活用したデータ分析や、ユーザー個別に合わせた提案機能を強化していきます。
実現のためのチャレンジ
加盟店名や、決済カテゴリ推定の精度を向上させ、ユーザーが視覚的に家計を把握しやすい仕組みの構築やユーザーが手作業で対応している家計把握上の手間な部分の自動化を進めていきます。例としては下記のようなことにチャレンジしていきたいと思います。
- 決済データから定期購入のパターンを抽出し、サブスク支払いで何にいくら払っているかを可視化する
- 個人の購買データや資産情報から最適な予算設定ができる
- 予算と比較した、お金の使い方の提案や、異常値(お金の使いすぎ)があった際の決済のペーシング提案
3. 決済体験の向上
B/43はこれまで、決済手段として磁気カードやICカードを提供してきましたが、非接触決済(ApplePayやGooglePay)には未対応でした。多くのユーザーから要望があり、今年中に対応を進めていく予定です。
提供したい価値
スマホだけで入金 ~ 決済 ~ 支出の把握まで完結するフリクションが無い決済体験の提供を行なっていきます。また、多様な加盟店で決済できたり、登録してから5分で決済までできるようにし、圧倒的に使いやすい決済サービスにしていきたいと考えています。
実現のためのチャレンジ
非接触決済(ApplePay / GooglePay)に対応することで、カードを持たずに決済できる体験の提供を進め、且つ事前にデポジットすることで、プリペイド式のカードで一部対応できていない加盟店(ホテルやガソリンスタンド)での決済にも対応していきます。またバーチャルカードを全ユーザーに提供し、すぐに決済できる体験に繋げていきます。
4. 資金サポート手段の拡大
B/43ではあとばらいチャージという機能で急な出費が発生した時に手元にお金が無い状態でもすぐに入金することができる手段をサポートしており、入金に対して手数料をいただくことで収益を上げています。B/43のマネタイズの中でも重要度が高いのですが入金額の設定や後日お支払いいただく金額の支払率の向上といった部分にまだまだ改善できるポイントがあります。
※ あとばらいチャージはB/43を通じて提携事業者により提供されますが、将来的には貸金業登録を行い自社でも一定融資していけるスキームを取れたらと考えています。
提供したい価値
ユーザーにとってはより早く求める金額を使いたい、株式会社スマートバンク側ではユーザーへの入金額の許容値を見極めて、スムーズに手数料の支払いを受けることができる構造を作っていきたいと考えています。
実現のためのチャレンジ
短期的には提携事業者が最適な入金額の設定をしていけるように現行の連携している基盤システムを拡張していきます。具体的にはユーザーの決済明細や、支出傾向を分析して支払い能力の判定精度を上げていくことや、残高が不足するタイミングでの入金提案、手数料支払日が近づいている際のリマインドなどスムーズな入金 / 支払い体験を実現していこうとしています。また長期的に自社で貸金業登録を取得のうえで事業を行う場合は与信のシステムを作る必要がありますので、そちらにむけて技術要件の把握を進めていく予定です。
5. オンボーディング体験の向上
B/43はユーザーが会員登録してからサービスの機能を活用いただき、メリットを感じてもらうまで本人確認や利用目的に応じた分岐、カードの選択 ~ 到着を待つなど、比較的長いステップがあります。

提供したい価値
カード決済や資産管理、ペアカードの利用などサービスの機能が増えるごとにユーザーのニーズも多様化しており、一枚岩のオンボーディングではなく、登録して5分以内に決済ができるなどユーザーがサービスメリットをすぐに感じてもらえるように体験を向上させていきたいと考えています。
実現のためのチャレンジ
オンボーディング体験を見直して、マイナンバーカードのチップ読み取りを利用した本人確認の簡略化や、オンライン決済のみの利用を想定されている方向けにすぐに使えるバーチャルカードの発行など、オンボーディングのハードルを下げつつ、家計管理、決済などユーザーが求めるコアな体験価値をすぐに感じていただけるようなサービス体験に作り替えていこうと思っています。
6. 不正対策
一般的に金融サービスは規模の拡大や入金・決済・出金手段が多様化すると不正利用や外部攻撃のリスクが高まります。具体的には違法なカードでの入金や、クレジットマスター攻撃と言われる不特定多数の不正決済、DDosなどの大量のリクエストなど、いずれも放置するとユーザーが安心してサービス体験を享受できない原因になってしまいます。株式会社スマートバンクでは不正対策を専門に行なっているチームがあり、今年からは一層不正に対する対策を強化していきたいと考えています。
提供したい価値
不正な入金や決済を素早くブロックすることで、安心してサービスを利用してもらえる体験の提供を行なっていきます。また、不正発生時にB/43では一定の金額をユーザーへ補償もしているため、そこの金額をより小さくすることは会社としてもメリットが大きいです。
実現のためのチャレンジ
現在は発生した不正に対して、予め検知ロジックを型化しリアクティブにサポートチームが対応する施策を重点的に行なっていますが、攻撃は急に発生することが多いため、より早く不正を検知し能動的にブロックする仕組みの導入を行なっていく予定です。また、運用面でも不正の傾向を分析するためのデータ基盤や、現行の管理画面にユーザー自身そして、ユーザーの行動なども含めてリスク判定するロジックを組み込むなど、オペレーション面での改善も重ねていきたいと考えています。具体的には下記のようなことにチャレンジしていきます。
- 不正決済 / 入金が発生した際の自動決済ブロック機能の強化
- 本人確認の業務精度向上
- 偽造書類などで本人確認申請があった際の判定強化
- 1回ではなく、定期的な本人確認手続き処理
7. データ分析基盤
これまで株式会社スマートバンクではBIツールとしてRedashを採用したり、RDBのテーブルデータをAWS Athenaにエクスポートしてデータ分析業務を行ってきました。しかし、データ量の増加や分析したい切り口の多様化につれれ、下記のような問題が顕在化してきました。
直面している課題
- データ量に起因して、データの取得や処理に時間がかかり、迅速な意思決定に活用できていない
- 仕様が複雑であり一部の技術者しかデータ集計ができない
- モバイルアプリの行動ログ、プロダクトのコアデータ、広告などデータソースがサイロ化しており、統合的なデータ活用が困難
- 個人情報のような秘匿性のある情報などデータへのアクセスをコントロールする必要がある
実現のためのチャレンジ
社員がより早く、コストが低い形でデータを利活用でき、施策の効果判定や事業戦略の判断に使えるように Snowflake をベースとした基盤の新規構築を行なっています。決済データはとにかくデータ量が多いのと、見たいKPI指標も多岐に渡るため、データを多段集計するためのバッチ処理や、個人情報やカード情報などセキュアデータのコントロールなどを行なっていっています。
8. モバイルアプリ
B/43のiOS / Androidアプリは ユーザーとサービスの接点 としてさまざまな体験価値の提供を支えてきました。今後、家計管理領域への幅広い展開を加速させていくにあたり、ユーザーの利用シナリオやユースケースもさらに多様化していくことが見込まれます。
重点的に取り組みたいテーマ
モバイルアプリにおける堅牢性を維持するために長期的視点での技術的負債の抑制とユーザー体験の最適化を両立する着実な設計思考が、一層求められていくと考えています。
※ 詳細は是非下記の記事もお読みください。 blog.smartbank.co.jp
実現のためのチャレンジ
決済や支出の把握だけではなく、資産管理や後払いといったユーザーへの提供価値が増える中で、負債が生まれにくい設計を行うことや、一部のエンジニアが両OSや複数チームを兼業していることから、チームのパフォーマンスを上げていく必要もあると考えています。 具体的には下記のようなチャレンジを重ねていく予定です。
- オンボーディングやホーム画面など複雑化が見込まれるコンポーネントでのより体系的な設計アプローチ
- SwiftUIへの移行など中長期的な技術スタックの変遷への追従
- CI / CDの最適化やAI活用などの生産性向上へ向けた技術的視点での取り組み
9. CRE(Customer Reliability Engineering)
新機能のリリースや既存機能の拡張により、プロダクトは日に日に進化しています。ユーザーが利用できる機能が増える一方で、その管理やサポートに必要なオペレーションも増加しています。株式会社スマートバンクではCREチームでそういったオペレーションを支えるツールの開発や、問い合わせを削減するための対策を中心に行なっています。
重点的に取り組みたいテーマ
サービスのスケールに応じて増加するオペレーションコストの低減とCSチームの生産性向上を重要KPIに設定し施策を行なっていきます。
※ 詳細は是非下記の記事もお読みください。 blog.smartbank.co.jp
実現のためのチャレンジ
増加しているeKYC(オンライン本人確認)業務の改善や、多く寄せられている問い合わせ原因の解消、リスクレベルが高いユーザーに対して本人確認を強化するための施策など、すでに様々なTryを重ねていっており、Try & Error を繰り返しながらKPIの改善を行なっていきます。 具体的には下記のようなチャレンジを重ねていく予定です。
- オペレーションが複雑化している業務アプリケーションの改善
- 増加している問い合わせの根本原因の解消施策
- 顧客情報基盤の強化施策
10. SRE(Site Reliability Engineering)
SREチームでは各チームから上がってくるインフラの構築や業務オペレーションの整備、またプロダクトに必要なセキュリティ品質の維持など、多岐に渉る業務を行なっており、3名体制でサービスを支えています。
重点的に取り組みたいテーマ
2025年のテーマとして、昨年アップデートされたPCI DSS(カード情報を取り扱う業者向けの国際セキュリティ基準)ver4 への完全対応や、より信頼度が高いインフラ構成への投資、そして増加する不正に向けての対策などを強化していきたいと考えています。
実現のためのチャレンジ
今年の前半には PCI DSS ver4 への対応は完了していく見込みですが、オペレーションの自動化などを通した業務改善も継続して行なっていきたいと考えています。また、デプロイ速度の向上などSREチームが主導して、開発者体験の向上も行なっていきます。
- PCI DSS v4.0 ベストプラクティスへの対応
- DDoSなどの攻撃を遮断し、防御するためのインフラ強化
- 開発者生産性の向上
- デプロイやテストの高速化
- B/43 の一部機能をWeb画面で確認できる環境の追加
- AIツールの導入
まとめ
B/43のサービスは事業軸でも機能開発を担当しているチーム軸でも様々な技術課題が存在しています。B/43のビジネスモデルのほとんどは決済やサブスク課金、融資といったユーザー様にサービスをより深く使っていただくほどスケールする構造になっており、それらを促進していくには、掲げている課題を早く解決し、プロダクト価値をより高めていく必要があります。
エンジニアがエンジニアリングを上手く行い、サービス価値を高めれば、それが跳ね返ってくる構造になっていますので、チャレンジングですが非常にやりがいがありますし、今回まとめた課題は2025年度に達成していきたいと思っておりますので、少しでも興味のある方がいらっしゃったら、是非一緒に課題解決していきましょう!