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受電待機を月136時間削減 株式会社スマートバンクの電話一次対応自動化プロジェクト

はじめに

こんにちは、株式会社スマートバンクのTakaoです。

私はカスタマーサポート部に所属し、主に不正モニタリングを管理しています。

また、カスタマーサポート部の一員として、クレジットカード会社や警察など法人からの受電対応業務の効率化にも取り組んでいます。

本ブログでは、私が入社1か月目から”Good First Issue”の一環として取り組んだ 電話一次対応の自動化について、その背景、導入までのプロセス、そして得られた成果をご紹介します。

“Good First Issue”については下記の記事をご参照ください!

株式会社スマートバンクのオンボーディング文化と、それを支える "Good First Issues" とは

背景課題

今回、電話一次対応の自動化を導入した背景には、以下の2つの課題がありました。

1. 受電対応スタッフの業務負荷

受電件数が1日平均10件未満のため、固定の受電対応スタッフは配置していません。そのため、スタッフは少数の着信に対応するために常時待機しつつ、他の業務も並行して行っています。結果として、以下のような負担が生じていました。

  • 常に電話の着信を意識し、緊張感を持ちながら待機する必要がある
  • 電話対応に入ると、進行中の業務が中断されてしまう
  • 作業が中断されることで、再開時にどこまで対応していたかを確認する必要があり、非効率が生じる

2. 安定した受電体制の確保が困難

時間帯やスタッフのシフト状況によっては、受電対応ができない時間が発生することもありました。

  • こうした不在時間帯の受電をカバーする手段として、一次対応の自動化は有効です
  • 自動化によって受電待機の必要が減り、スタッフは他の業務に集中する時間を確保できるようになります

解決の方針

本導入にあたっては、以下の方針に基づき、慎重に検討を進めました。

  • まずは、現状の業務を詳細に分析しました
    • 電話対応における業務内容を洗い出し、一次対応の自動化が有効かどうかを検討しました
    • 特に、ユーザーの個人情報を取り扱う必要があることから、どの情報を一次対応で取得するべきかを慎重に判断しました
  • 次に、有人対応と自動対応の両方に対応可能な複数の事業者に対して見積もりを依頼しました
    • 各社の料金体系対応範囲、および個人情報の取り扱い体制について比較検討を行い、株式会社スマートバンクの要件に最も適したサービスを選定しました

なぜ自動応答サポートを選択したのか

株式会社スマートバンクでは電話の自動応答サービスを提供しているIVRy(https://ivry.jp/)を導入しました。IVRyの自動応答サービスは業務効率の向上とリスク管理の両面において有効であると判断しました。主な理由は以下の3点です。


1. スタッフの業務効率化

  • 受電対応スタッフは、少数の着信に対応するために常時待機しており、業務効率が低下していました
  • 一次対応を電話自動応答サービスに切り替えることで、待機時間を他の業務に充てられるようになります
  • また、折り返し対応を前提とする運用により、複数名で業務を行う際にも、メンバー間で案件を選別し、対応することが可能になります

2. 有人サポートと比較した運用のしやすさ

  • オペレーターによる有人対応と比べて、自動応答サービスは設定の柔軟性が高く、業務要件に応じた調整が容易です
  • AIによる対応のため、個々のオペレーターの対応品質に依存せず、一定の品質を保つことができます
  • 個人情報の取り扱いについても、AIを活用した自動応答の方が、情報漏洩リスクを低減できると判断しました
  • また、有人対応では、ユーザーからの問い合わせに対してメールでの案内がしづらく、かえって対応の温度感が上がる可能性があると考えられます

3. 株式会社スマートバンクの方針との整合性

  • 株式会社スマートバンクではAI技術の積極的な活用を推進しており、自動応答サービスの導入はその方針にも合致しています
  • 社内の技術的な方向性とも一致しており、継続的な改善・最適化も見込めると判断しました

社内のAI活用推進に関して下記の記事で詳しく紹介しています。

ぜひこちらの記事もご参照ください!

会社のAI活用を推進する投資委員会という取り組みを紹介します!

導入にあたり準備を行ったこと

自動応答サービスの導入にあたり、以下の準備を行いました。

  1. 問い合わせ内容の分析
    • 法人から寄せられる電話問い合わせの種類や傾向を把握しました
  2. 現行ヒアリング項目の確認
    • 受電対応スタッフが各問い合わせに対して、どのようなヒアリングを行っているかを整理しました
  3. 現場対応の見学
    • 受電対応スタッフの実際の対応を見学し、会話の流れや言葉選びなど、現場ならではの工夫を把握しました
  4. フローチャートの作成
    • AI音声対応において、どのタイミングでどの質問を行うかを明確化するためのフローチャートを作成しました
  5. 音声テキストの作成と検証
    • 実際の電話で違和感なく案内できるよう、音声テキストを作成し、試験的な通話で確認・改善を行いました

準備段階で特に苦労した点

今回の自動応答サービス導入にあたり、最も慎重な対応が求められたのはユーザーの個人情報の保護でした。

特にクレジットカード番号は機密性が極めて高いため、録音に残らないよう、SREチームと綿密に協議を実施しました。その結果、以下の対策を講じました。

  • 音声テキスト内でクレジットカード番号を案内・取得しないよう注意事項を追加
  • 万が一、クレジットカード番号を申告され、それが録音に残った場合の対応手順を事前に策定

これにより、情報漏洩リスクを最小限に抑えつつ、安全に運用できる体制を整えました。

実際に導入してからの成果

IVRyの自動応答サービスを導入したことで、私たちは大きく分けて3つの成果を得ることができました。

  1. 受電待機時間の大幅削減と業務効率化
    • 受電対応スタッフが常時待機する必要がなくなり、他の業務に集中できるようになりました
    • その結果、受電待機時間を月間で136時間削減することに成功しました
    • さらに、事前に問い合わせ内容を把握できるため、心理的な負担も軽減され、心理的安全性の向上にもつながりました
  2. 電話受付時間の延長
    • これまでは、有人対応が可能な時間帯に限って電話を受け付けていました
    • 自動応答サービスの導入により、スタッフの対応時間外でも自動で用件をヒアリングできるようになり、受付時間を拡大することが可能になりました
    • これにより、柔軟な時間帯に問い合わせができるようになり、利便性が向上しました
  3. 不在着信の解消と用件の事前把握
    • 以前は受電対応中に別の着信があると不在着信となっていましたが、現在は自動応答によって不在着信が発生しません
    • その結果、すべての電話について用件を事前に把握したうえで対応できるようになりました

今後の展望

今後は、カスタマーサポート部以外の部署の受電状況も調査する予定です。そのうえで、株式会社スマートバンクで利用している他の外線番号にもIVRyの自動応答サービスを導入し、社内全体の業務効率化をさらに推進していく計画です。

株式会社スマートバンクのカスタマーサポート部は、ユーザー体験の向上だけでなく、社内業務の効率化にも力を入れています。 私たちの取り組みに共感いただき、カスタマーサポートやその他のポジションにご興味をお持ちの方は、ぜひカジュアル面談でお話しできることを楽しみにしています!

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