こんにちは。UXリサーチャーのmaayaです。
2025/02/18にRESEARCH Conference Lightning Talk2025 #1 で登壇する機会をいただきました。
LTでは載せきれなかった内容も含めてリサーチの社内流通を加速させる工夫 10選をご紹介します。
LTでお話した内容
本日は「リサーチの社内流通を加速させる小さな工夫」についてお話させていただきます。
LTのテーマを考えた時によく聞くリサーチのお悩みが浮かびました。
「ユーザー視点を事業に活かしたいけれど、社内でどう浸透させればいいかわからない...」
リサーチが社内に浸透しない原因は様々あるかと思います。
リサーチのやる・やらないの判断に課題がある場合
リサーチの設計・実査・分析に課題がある場合
リサーチの内容は良いけれど、リサーチデータの共有〜活用されるまでの社内流通に課題がある場合
今回は「社内流通の取り組み」についてご紹介いたします。
改めまして、スマートバンクのmaayaと申します。
スマートバンクは家計簿初心者の方でもシンプルで使いやすい家計簿アプリ「B/43」を運営しているFinTechのスタートアップです。
「明日からやってみようか〜」と1つでも興味を持っていただけるものをお届けできたらと思い、具体的な取り組み5選をご紹介します。
(本記事では続いて別の5選もご紹介します)
スマートバンク リサーチチームのHarokaさんがUXリサーチの活かし方という書籍を出版されているので、ぜひこちらもご購読いただけたら嬉しいです。
まず1つ目は「チームの視点を揃え 視野を広げるFigjam」です。 リサーチはチーム全員が適切なタイミングで状況把握し、意思決定に活かせることが重要だと考えています。
とはいえ、リサーチ以外の業務で忙しい職種にとって長いレポートや未整理のデータを追うのは負担ですよね...。
そこで「チームでリサーチデータを活用する」ことを軸に、最適な整理方法を考えています。
例えば、どのような流れで機能が使われるか、体験全体の流れを可視化する場合、機能利用のストーリーを軸に整理したり
事前に立てた仮説の検証や想定外の発見を可視化する場合は、問い・仮説を軸に整理したりします
具体的にはこんな形で整理しています
ユーザーの実態把握やインタビューごとの振り返りであれば、質問軸でテーブルを使って整理したり
ユーザビリティテスト・コンセプトテストなどであれば、プロトタイプ軸で整理したりします。
すべてにおいて「これが正解」というものはないのですが、
整理することが目的なのではなく、「チームでリサーチデータを活用する」ことを軸に日々まとめています。
2つ目は「エンジニアと連携するユーザビリティテスト」です。
前提として、ユーザビリティテストの実施メンバーは施策内容や検証形式など状況に応じて様々かと思います。
元々スマートバンクは、リサーチャー・PM・デザイナー・エンジニアとチーム一丸でユーザビリティテストを実施しているのですが、最近はPMと大枠を決めた後にエンジニアとリサーチャーでテスト形式の検討や、機材・環境の準備などを直接連携するケースがあり、メリットを感じたのでご紹介します。
まずリサーチャーからいくつかエンジニアに確認します。
例えば、
・テスト形式は、今回 検証端末を使うのか?テスト対象者のご自身の端末を使っていただくのか?
・テスト準備の役割分担でお互い1番スムーズな動き方の確認や、
・エンジニア視点で特に検証したいポイント
などを教えていただき、リサーチャーにてシナリオを設計し、チームメンバーにレビュー依頼します。
最近はNotionを2カラムにして、左列にデザインモック 右列にテストシナリオを並べてユーザビリティテストのシナリオを作成し、
エンジニアからは
・実装の進捗状況を踏まえて知りたい部分の抜け漏れがないか
・テスト時に必要なアカウントなどの事前準備
・テストでエラーが起きた場合の案内方法
などのコメントをいただきます。
感じたメリットとして、
シナリオに技術的な視点が含まれるため「リリースに向けて、特にここを重点的に検証しよう」など検証内容の優先順位付けがスムーズだったり、
テスト時の実装状況に応じて「ここもあわせてヒアリングできそう」など検証項目を調整しやすいため、リリースに向けてより有効なテストを実現しやすくなります。
3つ目は「リサーチKPT」です。
最近始めた取り組みなのですが、リサーチプロジェクトが終わった後にリサーチを行ったコアメンバーで振り返りをします。
・振り返り観点は設計 / 実査 / 分析 / 共有などに分けて、プロジェクトの流れを思い返せるようにハイライトを添えています
・視点はリサーチャー個人に対してでも、チームとしてでも、今後のリサーチ案件をよりアップデートしていく視点で意見出しをしていただきます
例えば、最近行った検証の1つで、新機能を1週間 社員に利用していただき、Slackのプライベートチャンネルで都度 感じたことや疑問などをつぶやいていただく検証を行いました。
1週間かけて、朝・昼・夜どのタイミングで機能利用したのか?どんな感情を抱いたのか?など、時折テスト対象者に質問をしたりしながら、リサーチャー・PM・デザイナー・エンジニアとチーム全員で1週間ウォッチしました。
そちらの検証のリサーチKPTで
・Keepはとてもありがたいお言葉をいただいたり...🙏
・Problemは「1週間の行動で何を考えていたのか?は少し拾いにくいなと感じた」 (時折質問はしていたけれど、振り返りヒアリングでは記憶が薄れてしまうので、もう少し聞けるとよかった)
など、リサーチャーだけでは気付けなかった次に活かせる視点をPMからいただけました。
・Tryとして、検証期間中にもう少しリアルタイムで質問できるよう事前の役割分担・検証観点を明確にしましょう(ただし質問しすぎて対象者が返事に億劫になるとつぶやきに影響するので塩梅は調整しましょう)
などをチームで話しました。
横断職種として健全に改善ポイントに向き合うことで「意思決定に役立つリサーチ」を実現していくと感じるので、状況に応じて今後もチームで振り返っていきたいと思います。
4つ目は「リサーチオンボーディング」です。
新入社員の方にSmartBankのリサーチ文化を理解いただき、ご自身の業務でユーザー視点を活かせるようになるための研修です。 私が入社する前からある取り組みで、Harokaさんがまとめられてるブログがありますので、ご興味ある方はこちらも合わせてご参照ください!
入社してからオンボ担当を引き継ぎがせていただき、新しい取り組みや感じたメリットをお伝えします。
まず、具体的にオンボーディングの内容ですが、
・入社初日に:会社のリサーチ文化やリサーチャーの役割についてご案内します
・入社月:前半に、リサーチャーから新入社員の方向けにインタビューをさせていたき、インタビュイーの視点を体感していただきます 「全部本音や鮮明な記憶で話せるわけじゃないんだな...」など実際に感じることで、インタビュー視聴時の観点を身につけていただきます
・入社月:1ヶ月間ユーザインタビューに参加いただき、試聴だけではなく書記も体験いただきます
・翌月:1ヶ月間の振り返りを実施します
例えば、振り返りで「自分の所属チームではないインタビューは経緯や背景理解がより難しかった」とデザイナーの方に教えていただきました。
その意見を参考に、デザイナーや広報の方など職種にあわせて過去のリサーチ経緯やターゲットユーザー像を事前説明するよう改善しました。
とはいえ、入社月はただでさえ覚えることがたくさんあるため、事前にこれまでのリサーチのご経験などを伺い、情報量を意識しながら「一気に覚えなくても大丈夫です」とお伝えするなど、研修が一方通行にならないよう心がけました。新入社員の方と一緒に事前説明に参加してくださったザイナーさんから嬉しいお言葉をいただいたので、視点合わせは重要だなと改めて感じました。
また大活躍中のモバイルアプリエンジニアの方がリサーチオンボーディングについて紹介してくださったり、オンボーディングは素敵な文化だと実感しています。
担当者視点で感じたメリットもたくさんあります。
・早い段階で関係を築き、横断職種としてお役に立てそうな勘所が身に付いたり
・新入社員の方にインタビューをすることで、プロダクトの利用状況や習熟度をインタビューで聞けるため「あの方は確か最近使い始めたばかりだったので、今回の検証にご協力いただくと良いかも...」「あの方は確かiPhoneではなくAndroidを使ってるとおっしゃってたな...」など、社内検証のリクルーティングのスピードアップに繋がっています
・リサーチデータに対する迷いポイントなども聞けるので、資産管理の改善にも繋がります
という流れで、最後にインタビューDBのアップデートについてご紹介します。
新入社員の方々や途中から参加するメンバーやどのインタビューを優先的に見ればよいかわかりづらい....
また、新入社員に限らず、インタビューの参加・不参加でユーザー像の認識がズレやすい
といったお悩みを教えていただきました。
解決策として、インタビューの管理は、元々Notionのはテーブル形式で時系列順に並んでいたのですが、「おすすめ回」ビューを新設しました。
おすすめ回の選択基準は
・ターゲットユーザーに近く、理解を深めるのに適している回や、
・社内でよく話題にあがるので共通認識を持つことで議論がスムーズになる回
・人間心理や行動原理が表れているので、施策のヒントとして活用しやすい回
などをリサーチャーで選定しています
その他のインタビューDBのアップデートについてもブログにまとめていますので、もしご興味ある方は読んでいただけたら嬉しいです!
LTに載せきれなかったパート
ここからの5選は時間の関係でLTに乗せきれなかったので、ブログでご紹介します。
インタビュー自体はzoomで実施しているのですが、参加人数の多さからインタビュイーの方が緊張して発話が減ってしまったりしないように、Slackのhuddleを通して社内にインタビューを中継しています。
メリットとして、
・社内メンバーのインタビューの参加ハードルが下がり、気軽に参加できることや、
・リアルタイムでモデレーターに追加質問を依頼できる点、
・Slackのわいわいスレで感想や気付きを共有し、インタビューに対する観点の幅が広がる
などがあります。
私の入社前からある取り組みなのですが、1本のインタビューごとにSlackで速報レポートをお届けしています。
メリットとして、
・インタビュー専用のSlackチャンネルを作ることで見逃しづらく、振り返りやすい仕組みができる
・書記シートの全体像や録画を見る時間がない方も、サクッとインプットができる
・インタビュー不参加メンバーに役立つ情報はメンションで積極的にお届けすることで、インタビューが役立つ幅が広がる
などがあります。
「インタビュー専用のSlackチャンネル」は速報レポートの発信に限らず、先ほどのインタビュー中継や、インタビューDBのアップデートのお知らせなど、幅広く活用しています。
インタビューの速報レポートや、Figjamとは別で、リサーチに参加していないメンバーにも経緯と調査結果を広く伝えることを目的に1枚絵で調査結果をまとめています。
業務委託でご協力いただいていた川勝さんから可視化担当を引き継ぎさせていただき、リサーチ施策ごとにまとめを作成してきました。
こちらのブログから川勝さん作成テンプレもDLできますので、よろしければご参照ください!
こちらも入社前からある取り組みで、担当引き継ぎさせていただいた取り組みの1つです。 主にマーケ、広報、銀行とのやりとりなどで「外部との商談がある方」向けに1ヶ月のインタビュー情報をお届けし、インプットの場として使っていただく会です。(どなたでも飛び入り参加大歓迎の会です)
リサーチプロジェクトの結果や進行状況を共有する場ではなく、ひとりひとりのユーザーに焦点を当て、生活の様子やプロダクトの利用・検討している状況、お金に対する価値観などをご紹介するのがメインの場です。
少しでも業務のヒントになればと思い、毎月開催(インタビューが少ない月はNotionにまとめて非同期で共有)しているのですが、みなさんしっかりと聞いてくださり、リサーチャーとしてとてもありがたい環境だと感じています。
また、参加メンバーの方々がわいわいスレで感想を共有してくれることで「こういったお話が役に立つんだな」という理解も深まり、今後のリサーチに役立つ視点を得られる会となっています。
「リサーチ結果が活用されずに埋もれてしまう」といったお悩みがある場合、「相手が知りたい情報を相手の負担にならない形で積極的にお届けする」姿勢が解決の鍵になってくると感じます。
横断職種のリサーチャーとして、他職種の視点・経験を深く理解することがリサーチ活動においてプラスに働くと考えています。
みなさん優しいので1on1を頼めばお話は聞けるのですが、せっかくなら役に立てるアクションは無いか?と考えました。
そこで、「自分語りをするのは恥ずかしい...」と謙虚な思いを持ちつつ、素敵なエピソードをたくさん持ってらっしゃる他職種の皆様にインタビュー形式でブログを発信してきました。
リサーチ施策に直結せずとも、社内流通をよくする取り組みの一環として、他職種のお役に立てるアクションは能動的に行っていきたいと思います!
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まとめ
最後にLTでもお話させていただいた内容をお伝えさせてください。
「明日から始めてみようかな」と興味を持っていただけるものを1つでもお届けしたいと思い、手段を中心にお届けしましたが、本来の目的はユーザー視点を事業に活かして貢献することだと常々思っております。
SmartBankはなぜリサーチをするのか
私たちは人々が本当に欲しかったものを作るというパーパスを掲げています。
これまでサポートしてきた お金を「使う」に加えて「貯める」「増やす」を全ての人にお届けするプロダクトを目指し、スマートバンクは今 変革期を迎えており 各職種 積極採用中です!
今のフェーズでご入社いただくと、人生の中で色濃い1ページを飾れると思います!
もしご興味持っていただける方は、カジュアル面談でも、定期開催しているオフィスパーティーでも、スマートバンクメンバーとお話できます。
オフィスパーティはどの職種でもご参加いただけますので、お気軽にご参加ください!
記事執筆時の直近の開催は 2025/02/27(木) 19:00〜です!
ここまで貴重なお時間をいただきありがとうございました!
読んでくださった皆様の取り組みやアイデア教えていただけたら嬉しいです 🫶